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Monthly Archives: 8月 2019

地方政治新聞「民主香川」に、「全世代直撃の社会保障改悪」というタイトルで、社会保障関連の内容の連載をしています。2019年8月11日付(第1822号)に掲載した、「国民健康保険制度を考える」(その3)の前半です。

国民健康保険の戦前の歴史を振り返ってみます。

医療保険制度の始まりは、1922年の「健康保険法」です。対象は労働者で、労働争議に対応する側面と、「恤救規則」(じゅつきゅうきそく)に基づく側面があります。

「恤救規則」とは、現人神(あらひとがみ)である天皇が臣民に慈恵を与えるというもので、「労働者の権利」や「基本的人権の保障」という性格はありません。それはともかく、法律で健康を保持する制度ができたという点では、一歩前進でした。

29年に世界大恐慌がおきます。日本でも農村が疲弊し、32年から34年にかけて、「時局匡救事業」(じきょくきょうきゅうじぎょう)(※)が行われます。

内容は、景気対策を目的とする公共事業である「救農土木事業」と、「経済更生運動」に分けられます。

後者は、当時の農村の伝統とされた「隣保共助の精神」を中心とした、「農山漁村経済計画樹立実行運動」というものです。各町村に経済更生委員会が設置され(後に振興委員会)、その下部組織として、町内会、部落会、隣組、隣保班という、戦時下の国民精神総動員運動により、戦時ファシズム体制を支える機構として形成されます。

一方で軍部も兵力の維持、とりわけ健康な青年の確保を目的として、「健兵健民政策」をうたって、厚生省を設立することになります。

この頃に、国家総動員法と併せて、国民健康保険法、船員保険法、さらに戦費調達を目的とする労働者年金保険法(後に厚生年金保険法と改称)が制定されました。


※「經濟論叢」129巻6号「経済更生運動と農村経済の再編」(岡田 知弘)

朝日新聞が、「全国の国立大病院42カ所で」「消費税を診療費に十分転嫁できず、2014 ~ 18年の5年間に計969億円を病院側が負担していることがわかった」と報じました。

記事によると「税率が8%になった14~18年の5年間で計969億円に上った。私大の付属病院などでも同様の傾向と見られる」としました。

本欄第743回(2015年8月25日)付け(※)で、「消費税が8%になり、多くの医療機関が経営が苦しくなっているのは事実であり、このまま10%増税には到底耐えられないという声が大きい」と指摘しました。

消費税増税は行うべきではありません。

※下記のアドレスを参照ください
https://hiraihou.t-heiwa.com/?p=941

地方政治新聞「民主香川」に、「全世代直撃の社会保障改悪」というタイトルで、社会保障関連の内容の連載をしています。2019年7月21日付(第1819号)に掲載した、「国民健康保険制度を考える」(その2)の後半です。

その一方で、自治体が関与することにより、住民自治によりうまくコントロールできる可能性があるという点もあります。

「行政」といっても最初から誰かが権力を持っている訳ではありません。地域の実情に応じて様々なやり方があり、「住民自治」で、住民本位の運営が可能になる可能性を秘めている訳です。

その典型例が、岩手県の豪雪地帯にある沢内村の実践です。

「厚生の指標」第56巻第8号(2009年8月)に掲載された「生命行政の検証-岩手県旧沢内村(現西和賀町)の老人医療費無料化が村におよぼした影響-」(※2)によれば、「沢内村は昭和35年12月から65歳以上,昭和36年4月から60歳以上と乳児の医療費無料化を実施した。しかし,昭和34年に国民健康保険法の実施に伴い特定地域の10割給付について県および行政機関から沢内の医療費無料化策は攻撃された」。

当時の深沢村長は「国民健康保険法に違反するかもしれない……憲法違反にはなりませんよ。国民の命を守るのは国ですよ。国がやらないのであれば私がやりましょう。国は必ず後からついて来ますよ」と反論したそうです。

また、同時に豪雪に対してはブルドーザーによる除雪などに力を入れ、積極的な保健師の採用や乳児健診を展開しました。

つまり、国民健康保険制度の仕組みの根幹には民主主義があるということです。

「社会保障及び国民保健の向上に寄与することを目的」とするという面で考えれば、住民自治が機能して、国保を中心に保健行政を住民本位に変革することができたら、住民の健康・福祉が大きく前進するということを実証した典型例だと思います。

※2鈴木るり子岩手看護短期大学専攻科地域看護学専攻教授

地方政治新聞「民主香川」に、「全世代直撃の社会保障改悪」というタイトルで、社会保障関連の内容の連載をしています。2019年7月21日付(第1819号)に掲載した、「国民健康保険制度を考える」(その2)の前半です。

さて、しばらく「国民健康保険制度」(以下、国保)について、考えていきたいと思います。

社会保険庁(※)は廃止される直前まで発行していた、「社会保険の手引き」の中で、日本の社会保険の特徴は5つあると説明しています。

①勤労国民の相互扶助を目的とする

②勤労者の福祉に対する企業主の責任を果たす

③国が責任をもって運営する

④法律で加入を義務付ける

⑤所得に応じて保険料を負担し、必要に応じて給付を受ける。

これは明らかに生命保険会社や損害保険会社が提供する私的保険とは異なります。

勤労者も負担し、企業も負担し、国も負担するという形になっており、国保の場合は、国民も負担し、自治体も負担することになります。

58年に施行された「国民健康保険法」は、(この法律の目的)として、第一条で「この法律は、国民健康保険事業の健全な運営を確保し、もつて社会保障及び国民保健の向上に寄与することを目的とする」としています。

「事業の健全な運営を確保」できれば問題はありませんが、確保できない、つまり自治体が大赤字になったら住民負担が際限なく増えてくるという構図になる訳です。
 
 ※社会保険庁は、年金未納や年金記録消失など不祥事が発覚したため、2009年(平成21年)末に廃止され、特殊法人の日本年金機構と全国健康保険協会(協会けんぽ)に業務が移管されました。

就職情報サイト「リクナビ」を運営するリクルートキャリアが、サイトを利用していた就活学生の「内定辞退率」を、人工知能(AI)をもとに予測し、38社に有償で提供していたことがわかりました。

利用者のサイト閲覧内容を、企業に有償で、つまりリクルートキャリア社の金もうけの道具として利用することがあるということは、同意を得ていません。このことは、IT時代の危うさを示すと同時に、金で情報を買っていた38社の企業倫理にも大きな疑問を持つ問題です。

医療福祉生協は、「医療福祉生協のいのちの章典」で、<自己情報のコントロールに関する権利>として、「私たちは、個人情報が保護されると同時に、本人の同意のもとに適切に利用することができるようにします」としました。

この事件を予測したわけではありませんが、個人の様々な情報(自己情報)を利用することは個人の同意のもとに行うべきであるという、私たちのスタンスを明確にしたものです。

こういう事件が起きた今、「いのちの章典」の内容を多くの人たちに知ってもらう必要があるのではないか、金で情報のやり取りをする企業倫理、今回でいえばリクルートキャリア社、情報を買った38社の倫理上の問題を問うていく必要があると思います。

7月28日に神戸市長田区で、「いのちの章典」と「理念」――「ガイドライン」を活用し実践しよう、題すると講演を行いました。地域の組員さんを中心に136名の方に参加していただきました。

内容は、協同組合と生活協同組合について、「医療生協の患者の権利章典」と「医療生協の介護」が果たした役割、「医療福祉生協のいのちの章典」の果たす役割、「いのちの章典実践ガイドライン」のもつ意味、何より実践が重要であることなどを、全国各地の実践を交えて講演しました。

講演後のアンケートでは、

・色々考え、研究し調べられてつくられたことがわかり、内容をかみしめ実践しないといけないと思いました。

・カルテ開示(知る権利)、自己決定権 の重要性を再認識した。

・「協同組合の思想と実践」はユネスコの「無形文化遺産」 初めて聞いた、感動!!

・「組合員は応援団ではなく、主体者である」→「組合に入ってくれるだけでいい」ではいけない。おしつけでなく、組合員が興味をもち動き始めるイベント、班活動等必要。

などの感想が寄せられました。