毎週火曜日・金曜日更新予定。理事長ブログ

Monthly Archives: 2月 2018

安易な抗生物質(抗菌薬)の使用により薬剤耐性菌が増加し、その対策は国際的にも重要な課題となっています。今回の改定で、この問題が取り上げられました。

「外来診療における抗菌薬の適正使用に関する患者・家族の理解向上のため」として、小児科外来診療料(※)等において、抗菌薬の適正使用に資する加算が新設されました。

「急性上気道感染症又は急性下痢症により受診した小児で、初診の場合に限り、抗菌薬投与の必要性が認められず抗菌薬を使用しないものに対して、抗菌薬の使用が必要でない説明など療養上必要な指導を行った場合に算定する」 とされます。

不要な抗生物質を投与しないようにするのはよいことだと思いますが、それを点数化するというのは少し違うのではないかと思います。

先日ある会合でお話しした開業医の先生も、点数化するのは少し筋違いではないかという意見をおもちでした。

医療費を使ってこういう制度を導入するより、国民を「教育」するキャンペーンにお金を使うべきではないでしょうか。

※小児科外来診療料とは、時間外加算や往診などを除いて、投薬、検査等が包括化された点数。

地方政治新聞「民主香川」に、「全世代直撃の社会保障改悪」というタイトルで、社会保障関連の内容の連載をしています。2018年2月18日(第1770号)に掲載した、「診療報酬の4月改定の問題点をさぐる(その1)」の後半部分です。一部修正しています。

(承前)

在宅患者訪問診療料については、複数医療機関が行う場合の評価の新設が打ち出されました。その一方、在宅時医学総合管理料等に通院困難や特に支援を要する患者に対する「包括的支援加算」が新設されましたが、対象患者は「要介護度」「認知症高齢者の日常生活自立度」など6項目と制限され、対象患者以外は評価が引き下げとなるなど、在宅の機能分化が進められています。

さらに、施設や高齢者住宅など、単一建物診療患者数に係る規定が、訪問薬剤管理指導や訪問栄養食事指導にも拡大しています。管理の内容や指導内容が変わらないのに、単に人数によって大きく点数差が出るこのような算定方式には問題があります。

今回の目玉ともいうべき、ITを利用した「遠隔診療」では、「オンライン診療料、オンライン医学管理料」が新設されます。緊急時対応等の医療安全、情報通信機器の普及度(地方では通信インフラの整備そのものが不十分)、個人情報やプライバシー保護、オンライン診療の効果に対する医学的エビデンスが不十分であるなど、保険診療への拙速な導入には疑問があります。

入院では、一般病棟・療養病棟・地域包括ケア病棟・回復期リハビリテーション病棟が、看護体制等による基本部分と看護必要度等の実績部分を組み合わせた評価体系に再編・統合されます。

一般病棟は、これまで医療安全面や看護労働面から十分な看護職員を確保することが評価されていましたが、10対1看護配置を基本評価として、重症度、医療・看護必要度(以下「看護必要度」)により7段階の報酬区分とする「急性期一般入院基本料」と、15対1看護配置を基本評価とし、看護配置や看護必要度の測定実績による3段階の報酬区分とする「地域一般入院基本料」が設定されます。

次号から、今回改定の詳細について現時点で判明している内容について触れていきます。

地方政治新聞「民主香川」に、「全世代直撃の社会保障改悪」というタイトルで、社会保障関連の内容の連載をしています。2018年2月18日(第1770号)に掲載した、「診療報酬の4月改定の問題点をさぐる(その1)」の前半部分です。一部修正しています。

4月から医療保険の診療報酬、介護保険の介護報酬、障害福祉サービス等報酬の改定、いわゆるトリプル改定が行われます。

今回は、まず診療報酬改定から触れます。診療報酬改定は2月7日に開催された第389回中医協(中央社会保険医療協議会)で改定案がまとめられ、加藤厚労相に答申されました。

ただ、細かな解釈については明確でないことも多く、通常3月初旬に出される告示・通知、3月以降に発出される事務連絡、疑義解釈(Q&A)などを待たないといけません。実は2年に1回の改定では3月から4月にかけて、さまざまなやりとりがあり、現場は常に混乱します。4月1日から制度が変わるのに4月1日時点で不明なことや、4月1日付の通達が2日以降に出されることもあります。

さて、今回の改定は、医療技術や診察料や入院料などの基本的部分を評価する「本体」部分を0.55%引き上げる一方、薬の値段や診療材料など「モノ」の価格を示す「薬価・材料」を1.45%(薬価が1.36%、材料価格が0.09%)引き下げました。また、薬価制度の抜本改革で0.29%、大型門前薬局に対する評価の適正化を「別枠」で行うため、全体として1.25%のマイナス改定となります。

今回の改定の中心点は、「地域包括ケアシステムの構築と医療機能の分化・強化、連携の推進」であり、医療従事者の負担軽減、働き方改革の推進、生活習慣病の重症化予防の取り組みなどを重要な課題として掲げています。

個別の課題では、複数医療機関からの訪問診療料の算定を可能にする、ターミナルケアの評価の充実など、高齢化社会に対応した内容が含まれており一定の評価はできます。

外来では、「かかりつけ」算定要件を一部緩和し、関連点数の算定を広げ、地域における患者の受入機能の強化をはかる仕組みが広げられました。地域包括診療料・加算等、在宅時医学総合管理料等(在宅療養支援診療所、在宅療養支援病院に限る)届出等医療機関の初診料に「機能強化加算」が新設されるなど、一部の医療機関を評価する形にはなっていますが、地域医療を守る診療所全体の底上げになるものにはなっていません。

地方政治新聞「民主香川」に、「全世代直撃の社会保障改悪」というタイトルで、社会保障関連の内容の連載をしています。2018年1月21日(第1767号)に掲載した、「診療報酬等のわずかなアップでは社会保障は充実しません」の後半部分です。一部修正しています。

(承前)

一般病棟の入院基本料7対1、10対1は、民間・公的病院(国公立を除く)でも、損益差額が前回、今回調査ともに連続して赤字で、病院経営は危機的状況にあるといえます。

大病院も例外ではありません。近畿大学が大阪狭山市にある医学部と付属病院(929床)を堺市の泉北ニュータウンに新病院を建設し移転、現在の付属病院を300床の分院として存続させるという従来の計画を変更、大阪狭山市の病院閉鎖を検討していることが、17年12月に明らかになりました。

この件について、近大は「人的不足および経済的要因のため、大阪狭山市の病院の閉鎖、新病院の病床数を800床へ縮小、医学部堺病院の経営譲渡などを検討する旨の計画の変更を、11月29日に大阪府知事あてに申し入れました」と発表し、大問題になっています。

民間・公的病院の中小病院は医業収益が減少、特に小規模病院の医業収益の減少が大きく、損益差額が赤字に転落しており、地域で身近な小規模病院の存続が危ぶまれる事態になっています。

前回、調剤医療費の増加を問題にしましたが、すべての調剤薬局が大儲けしている訳ではありません。個人立の薬局では給与費の圧縮により+0.4%ですが、全体の9割以上を占める法人立では▲0.6%と減収になっています。ただ、同一法人における店舗数別でみると、20店舗以上の薬局の損益状況は12%以上となり全体平均を大きく上回り、「1店舗」および「2〜5店舗」の薬局の損益状況は4%前後と非常に小さくなっています。

患者・利用者と気軽に相談に乗れる、「街のお薬屋さん」が苦戦している状況が表れているようです。

いずれにしても、本体0.55%の増では「医療崩壊」と呼ばれる状況の改善には遠く及ばず、「社会的保護の床」(※)が崩れていく危険があります。

※12年のILO(国際労働機関)総会で提起されたもの。Social protection  floor。適度の食糧、住宅、水、衛生、教育、健康のために十分な収入を得、文化的な生活に参加し、自由に自己表現ができ、考えや知識を共有できることを指す。私たちが捉える社会保障の概念より広い内容を含んでいる。

地方政治新聞「民主香川」に、「全世代直撃の社会保障改悪」というタイトルで、社会保障関連の内容の連載をしています。2018年1月21日(第1767号)に掲載した、「診療報酬等のわずかなアップでは社会保障は充実しません」の前半部分です。一部修正しています。

17年12月18日、加藤厚労大臣と麻生財務大臣は、18年度の診療報酬改定率について、本体を0.55%引き上げる一方、薬価等を1.45%(薬価1.36%、材料価格0.09%)引き下げる、また薬価制度抜本改革で0.29%引き下げることに合意しました。全体では1.19%のマイナス改定になります。

ただ、「別枠」として、大型門前薬局に対する評価の適正化が、国費ベースで60億円程度と報道されており、現在検討中とされる保湿剤の給付制限・保険外しが行われるなら、実質の引き下げ幅はさらに拡大します。

細かく見ると、医科改定率は+0.63%、歯科は+0.69%、調剤報酬は+0.19%です。薬価等は、薬価が▲1.65%。内訳は、実勢価等改定で▲1.36%、薬価制度の抜本改革で▲0.29%。材料価格が▲0.09%となります。

介護報酬は、改定率+0.54%。障害者福祉サービス等報酬改定は、+0.47%となりました。

これに伴い、政府が目指していた社会保障費の自然増を1300億円圧縮する目標が「達成」されました。

診療報酬は、診察料や検査料などの「本体」部分と、薬剤費、医療材料費などで構成されます。薬剤費や医療材料費は値引き部分が収益になりますが、使用しなければこの部分の収入はゼロになります。外来の場合、診察だけで薬も注射も処置もなければ、診察料だけの収入になりますから、本体部分の引き上げがなければ医療従事者の処遇が改善するわけがありません。

17年11月に公表された、第21回医療経済実態調査によると、病院の損益差額率は、一般病院で15年度の▲3.7%から16年度は▲4.2%と赤字が拡大、精神科病院では15年度の0.2%から16年度は▲1.1%となり、赤字に転落しました。

一般病院(法人・その他)では、1施設当たり給与費総額の伸び率が2.1%増加し、給与費率が55.1%から56.0%に上昇し損益差額率が低下しています。給与費が伸びたというと一見処遇が改善したかのようにみえますが、一般病院の主な職種別1人当たり平均給与費の伸び率は、おおむねほぼ横ばいかマイナスで、給与費の増加はさまざまな職種の従事者が増加したことによる、総額の増加と考えられます(要するに人が増えただけです)。

(次回に続く)

地方政治新聞「民主香川」に、「全世代直撃の社会保障改悪」というタイトルで、社会保障関連の内容の連載をしています。2017年12月17日(第1764号)に掲載した、「調剤報酬の見直しについて」の後半部分です。一部修正しています。

(承前)

実際は薬剤師の数も少なく、地方には薬局も数少なかったため、「医薬分業」(薬の書府は医師が、調剤は薬剤師が行う)は大きくは広がりませんでした。

そのため、1974年は医薬分業元年と呼ばれ、医療機関が調剤薬局に対して発行する処方箋料を大幅に引き上げ、医薬分業は徐々に進んでいきました。92年にはさらに処方箋料を引き上げ、97年に厚生省(当時)が37のモデル国立病院に対して完全に医薬分業を進めることを指示し、医薬分業率は急速に進みました。03年には50%を超え、16年には70%を超えるようになりました。

もともと、医師の処方した薬を医師と薬剤師が相互にチェックしたり、他の医療機関の処方薬との重複や相互作用(薬の飲み合わせ)のチェックを行い、医療の安全性を高め、医療費の抑制につながると判断したためです。

しかし、院内処方と院外処方では、自己負担額は大きく異なります。高血圧や糖尿病などで28日分の内服薬が処方されたケース(注1)では、投薬に関する費用は、院内処方の場合1390円(3割負担で420円)に対して6080円(1820円)になります。16年に導入された「かかりつけ薬剤師・薬局」での調剤だと、さらに負担は増えます。

調剤医療費は04年に4兆円を超え、15年には8兆円近くまで増加してきました。また、欧米に比し新薬が高すぎる問題などもあり、今回薬価のあり方や調剤料が問題になってきました。

12月8日に開催された第377回中医協では、店舗数の多いチェーン薬局、門前薬局、敷地内薬局(注2)などを対象に引き下げが検討されています。

注1:「週刊東洋経済」17年11月11日号より引用

注2:門前薬局は大病院の周囲にある薬局や、医療機関のすぐ前や横にある薬局のこと。敷地内薬局は医療機関の敷地内にあるもので、従来は禁止されていましたが、規制が緩和され大病院などで導入されています。門内薬局とも呼ばれます。

注3:調剤薬局の報酬の仕組みは大変複雑で、取り扱う処方箋の1か月あたりの枚数、特定の医療機関からの処方箋が集中していないか、薬剤の納入価が何%決定しているかなどにより変わってきます。

生活保護基準の引下げの撤回を求めます!(声明)

2018年2月7日

日本医療福祉生活協同組合連合会
代表理事会長理事 藤原 高明

生活保護の受給額は、5 年に一度見直されています。昨年の12月に、政府は生活保護受給額のうち食費や光熱費など生活費相当分について、2018年10月から3年かけて段階的に、国費ベースで年160億円(約1.8%)削減する方針を決めたと報道されています。前回に続き2回連続での引下げとなります。

生活保護は、憲法25 条が定める「健康で文化的な最低限度の生活」を保障する重要な制度です。また、突然の病気や事故、ひとり親家庭など、様々な事情で生活が困窮した際に、生活基盤を立て直し、再び自立した生活に繋げていくためにも必要な制度です。

最低生活保障基準である生活保護基準の引き下げは、生活保護受給者だけでなく、最低賃金や住民税非課税基準、就学援助、高額療養費制度、国民健康保険の一部負担金・保険料の減免基準、介護保険の利用料・保険料の減免基準など、くらしの安心にも影響を及ぼすものだと考えます。

2019 年10 月には、消費税のさらなる増税も予定されています。消費税は、所得の低い人ほど負担率が大きくなる逆進性の問題があり、生活保護受給者など所得の低い人にとっては、より大きな負担になります。

また、生活保護受給者について、医師が問題ないと判断すれば、先発医薬品より安い後発医薬品(ジェネリック)を原則使用することを生活保護法に明記するとも報じられています。医療費の適正化と患者負担の軽減に向けてジェネリック品を使用することは問題ありませんが、生活保護者に限って治療内容の選択肢を奪うのは間違いであると考えます。「医療福祉生協のいのちの章典」は「知る権利、学習権をもとに自己決定を行います」としています。受給者の理解と自己決定に基づき適正化はすすむべきです。また、「ジェネリックは困窮者の薬」であるとの誤解が広がる可能性も危惧されます。

全国の医療福祉生協は、行政やNPO などの諸団体と連携しながら、無料低額診療や子ども食堂、無料塾など、生活困窮者への支援にとりくんでいます。

こうしたとりくみの経験を踏まえ、今回の生活保護基準の見直しが、受給者の生活水準を下げることにつながらないよう、十分な配慮が必要だと考え、生活保護基準の引下げの撤回を求めます。

以上

地方政治新聞「民主香川」に、「全世代直撃の社会保障改悪」というタイトルで、社会保障関連の内容の連載をしています。2017年12月17日(第1764号)に掲載した、「調剤報酬の見直しについて」の前半部分です。一部修正しています。

18年4月は、「トリプル改定」、医療における診療報酬、介護における介護報酬、障害者福祉サービスの3分野の改定の時です。

診療報酬は中医協(中央社会保険医療協議会)で、介護報酬は社会保障審議会 (介護給付費分科会)で、検討が行われます。しかし、今回は、内閣支持率の極端な低下を背景に、いわゆる「もり・かけ」疑惑隠しを目的とした、安倍首相の臨時国会冒頭解散のため、審議がきちんと行われませんでした。

中医協の議論は、9月までは月2回、10月は週1回で行われましたが、選挙が終わった10/25からは週2回のペースで開催されています。

介護給付費分科会は、もともと月2回のペースで開催されていましたが、安倍首相の総選挙実施の決断に合わせ、9/20の会議を9/13に変更した後、中断となりました。今回の改定では介護報酬が大幅に引き下げる議論が行われていましたから、選挙に不利になるためではないかと考えられていました。選挙後は、10/25、26、27と異例の3日間連続開催となり、11月からは週1回のペースで行われています。

さて、まず、診療報酬の議論です。

今回の焦点の一つは調剤報酬、薬剤に関わる報酬です。

江戸時代までは、日本では薬の調剤は医師の仕事で薬剤師は存在していませんでした。近代化を進める明治政府は、医療分野ではドイツの制度を導入し、医療に関する総合的な制度を定めた、「医制」を1874年(明治7年)に公布しました。その中で、こう記しました(日本薬剤師会のHPより引用)。

「医師タル者ハ自ラ薬ヲ鬻(ヒサ)クコトヲ禁ス 医師ハ処方書ヲ病家ニ附与シ相当ノ診察料ヲ受クヘシ」

「調薬ハ薬舗主薬舗手代及ヒ薬舗見習ニ非サレハ之ヲ許サス」

「処方書」は処方箋(しょほうせん)、「病家」は患者さんのことで、処方箋を出して診察料を受け取るという今日では当たり前の医師の姿が、あるべき姿として描かれています。「薬舗主」は薬剤師で、1889(明治22)年の『薬律』制定とともに、本格的な薬事制度が導入され、薬局、薬剤師の呼称が用いられるようになります。

(次号に続く)