Monthly Archives: 12月 2015
2015年の最終号です。
2014年は過去最低の72回でしたが、今年はこれを少しだけクリアして76回でした。
内容は、医療・介護総合法関連の医療・介護分野の話題、4月からの介護保険制度と介護報酬の改定、医療福祉生協連の国際活動、平和安全法制(戦争法)関連の話題が、全体の4分の3を占めました。
今年は、介護保険制度の変更、介護報酬の切り下げから始まりました。介護の分野の問題は、介護報酬が低すぎるために人件費も切り詰めざるを得ない、介護労働が厳しいためなり手が少なくなっている、など全国的にも介護事業所の閉鎖が目立っています。「介護保険料あって、介護保険のサービスなし」とでもいいたくなるような状況が進んでいます。
やはり、現実に合った報酬制度に変えていかない限り問題は解決しないと思います。
医療制度も大きく変わろうとしています。必要な時に入院可能なベッドがどんどん削減されています。香川県内では、この10年余りで3,260床が削減されており、県の方針によるとさらに2,000床削減削減される予定です。善通寺市内でみると、こどもとおとなの医療センターを除くと、内科疾患で入院可能な病院は、民間病院1カ所で46床です。身近で入院するベッドはなくなっているのです。
「入院需要」を元に病床削減を行っていきますから、ベッドが減る、入院しにくいので我慢する、「需要」が減る、ベッドを削減するという悪循環になることは目に見えています。
こういった、社会保障の改悪にどう対抗していくのか、来年の課題だと思います。そして何より「戦争法」の廃止、集団的自衛権の容認の撤回、これも重要な課題だと思います。
医療・介護など社会保障の抱える問題、平和な日本を守る課題など、引き続き情報発信を行っていきます。2016年は1月5日から再開します。
香川県保険医協会報の「社保のコーナー」に、医療保険制度改革法に関する連載を行っています。2015年10月号掲載分で、一部修正しています。
「医療保険制度改革法」で決まった、国民健康保険制度の都道府県単位化を取り上げます。
2015年2月12日に開催された第5回「国民健康保険制度の基盤強化に関する国と地方の協議」の議論が元になっています。
国保財政の危機は、この30年間で国庫支出金が45%から25%に減らされたことが直接の原因です。
厚労省は、公費拡充等により財政基盤を強化する目的で、「毎年約3,400億円の財政支援」するとしています。
その内容は、低所得者対策として、15年度から消費税を使って毎年1,700億円を、18年度からは協会けんぽなどの後期高齢者支援金を総報酬制にすることにより浮いた1700億円を投入します。
これにより、被保険者一人あたり1万円の財政効果があるとしています。
一見、保険料が1万円安くなるように思えますが、全国の市区町村が国保財政の赤字を埋めるための法定外繰入れ額は3900億円ですから、それよりも少ないのです。
さらに、国保が都道府県単位になり、繰入れがなくなれば保険料が安くなることはありません。
また、15年度から(原資が消費税であるとはいえ)低所得者対策として1700億円が投入されたら低所得者の保険料がさがるかというと、その保証はありません。対象となる世帯の割合により市区町村に交付されるため、赤字の補填に使われる可能性が高いからです。
自治体キャラバンなどの自治体との懇談の中で明らかにしていく必要があります。
香川県保険医協会報の「社保のコーナー」に、医療保険制度改革法に関する連載を行っています。2015年9月号掲載分です
「医療保険制度改革法」の細かな内容について、議論は進んでいません。
国民皆保険制度の崩壊につながるのではないかと懸念される「患者申出療養制度」の議論を紹介します。
「患者申出療養制度」は、新しい治療方法等を、「患者の希望」により認める制度です。
9月9日の第303回中央社会保険医療協議会に提出された、患者団体の意見を紹介します。
難病や長期慢性疾患をもつ患者団体の連合会で、全国組織85団体が加盟している日本難病・疾病団体協議会(JPA)は、本制度施行に当たり「患者団体からの意見聴取の予定がない」ことを指摘した上で、1)本制度は例外的なものであり、混合診療の全面解禁は行わない、2)対象の未承認薬等は他に治療の選択肢がない場合に限る、3)制度の導入により保険収載が促進される理由と裏づけとなる予算確保等の整備、4)インフォームド・コンセントの徹底、5)申請から6週間で安全性・有効性が確保できるとする理由、6)相談支援員の要請・配置、7)この制度を検討する会議への患者団体の参加、8)有害事象発生時は国の責任で公的保障とすることなどを要望しました。
またこれらについての審議が尽くせない場合は、制度施行の延期を要望しました。
厚労省のホームページに掲載されている現行の先進医療にかかる制度に基づく「試算図」は現実とは異なり、先進医療の患者負担は7年前の49万円から73万円に増加している、と指摘しています。
香川県保険医協会報の「社保のコーナー」に、医療保険制度改革法に関する連載を行っています。これまで掲載した記事と重複するところが多いのですが、せっかく書いた原稿なので、再利用することにします。
2015年8月号掲載分です
医療・介護がどう変わっていこうとしているのか、数回にわけて連載していきたいと思います。法案の正式名は長いので、略称を使用します。
今回の「医療保険制度改革法」の対象となった内容は以下の通りです。
・現在市町村単位で個別に運営されている国民健康保険制度を、18年度から都道府県単位で財政運営を行う。具体的には、国保基盤協議会などで議論する。
・高齢者医療保険制度への「支援金」を全面的に「総報酬制」とし、報酬水準の低い健保組合や協会けんぽの負担を減らす。
・協会けんぽへの国庫補助割合を検討する。
・医療費適正化計画の見直しを行う。
・入院時食事療養費の引上げを行う
・紹介状なしで大病院を受診(初診)する際、5,000円から10,000円の自己負担を課する定額負担制度を導入する。具体的には中医協(中央社会保険医療協議会)で議論する。
・所得水準の高い国保組合への国庫補助金を削減する。
・後期高齢者保険制度導入時に激変緩和措置として行った、後期高齢者保険料軽減特例を段階的に中止する。
・標準報酬月額の上限額を引き上げ、保険料の引き上げをはかる。
・患者申出療養制度を創設する。具体的には中医協で議論する。
上記のように、大まかな枠組みは決まっていますが、細部にわたる内容はこれから決まっていきます。
キルティプル病院の後、サクーの他の被災地訪問を予定していましたが、雨模様になってきたため(足元が悪いと滑りやすいので)、行先を変更し、ダルバール広場に向かいました。
ダルバール広場は王宮前広場で、歴史的建造物が立ち並んでいるところです。多くの建物がレンガを積み上げただけの作りなので、大きい地震ではひとたまりもありませんでした。
この建物を修復するには巨額の資金が必要です。カンボジアのアンコールワットのように、世界からの援助がなければいけないのではないかを思います。
- ダルバール広場の入り口です。ここで、観覧料を支払います。中は、結構危険なのですが、やはり観光収入がネパールには大事なの で、安全にギリギリ配慮して観光客の訪問を受け入れているようです
- 少し歩いていくと、建物は崩れかかっています
-
17世紀に建立されたクリシュナ神をまつる
チャシン・デガ
- 崩れ落ちたチャシン・デガ
-
これも17世紀に建立されたプラタップ・マッラ王の
石柱(写真は石柱の上部です)
-
上部の王とその家族は崩れ落ち、
石柱だけが残っています
11月24日付(第762回)の続きです。フェクトネパール訪問の後、カトマンズのキルティプル病院を訪問しました。
医科大学は現地の事情で開設できていませんが、病院は順調に稼働しているようでした。ICUや火傷センター等は順調に運営が行われていました。資金面ではまだ苦労しているようで、エレベーターの設置スペースはありますが、まだ階段で移動していました。
徐々にではありますが、「夢をかたちに」変えていく姿を見ることができました。来年は、APHCO(アジア・太平洋地域保健協同組合協議会)理事会が、ネパールで開催されます。また、一つ前進していることを願います。
注:キルティプル病院については、下記のHPを参照ください。
■第528回 2012年10月05日
http://kagawa.coop/hiraihou/20121005.html
■第613回 2013年11月22日
http://kagawa.coop/hiraihou/20131122.html
- 口蓋裂・火傷センターの入り口です
- エレベーターはまだついていないようです
- キルティプル病院から見たカトマンズ市内
- ICUの中です
- キルティプル病院から見た、スワヤンブナート
- 病院の前で記念撮影。今回見直していたら、「proposed」と看板に追加があるのに気づきました
地方政治新聞「民主香川」に、「史上最悪の社会保障改悪」というタイトルで、社会保障改悪の内容を連載しています。2015年10月18日号(第1686号)に掲載した、「第9回 看護師の特定行為について考える(下)」で、一部修正しています。
看護師の「特定行為」の問題点についての連載です。
従来は医師(歯科医師)にしか認められなかった医療行為のうち、「医師又は歯科医師が患者を特定した上で、看護師に手順書により特定行為を実施するよう指示」したものについては、一定の研修の後にそれを認める制度の事です。
現在でも、医師にしか認められない行為(「医行為」と呼びます)であっても、医師が個別に具体的な指示を行えば、実際に看護師が様々な医療行為を行っています。入院患者の場合、医師が常に患者のベッドサイドにいる訳ではありません。外来診療や検査を行っている場合、電話や院内ファックスを利用して看護師が病状の報告を行い、医師の具体的な指示の下に、看護師が注射その他の処置を行っています。
ですから、新しい制度は、本来なら医師が身近にいない環境、具体的には在宅医療が対象になるはずです。しかし、厚労省の議論を見ている限り、在宅に限らず適応しようとしていることが伺えます。
確かに、在宅医療では、常時医療従事者が患者のそばにいる訳ではありません。急変時などに主治医の医師や看護師、訪問看護ステーションの看護師などに連絡をする訳ですが、常に医師が最初に駆けつけるとは限りません。
看護師が最初に到着したら当然必要な処置を行う訳で、あらかじめ決められた手順に基づき、看護師の判断で医療処置が行われることになります。これは、医師にしかできない行為を、医師の指示のないままに看護師が行う訳で、厳密に言えば医師法に違反することになります。しかし、現実的には必要な医療行為です。
こういった矛盾を解決するために、一定の「医行為」を看護師が行うことを合法的にすることは、在宅医療を進める上で必要な処置だと思います。
問題は、
・大動脈内バルーンパンピングからの離脱を行うときの補助の頻度の調整
・一時的ペースメーカリードの抜去
・経皮的心肺補助装置の操作及び管理
・低圧胸腔内持続吸引器の吸引圧の設定及びその変更
・急性血液浄化療法における血液透析器又は血液透析濾過器の操作及び管理
・抗けいれん剤の臨時の投与
などの、相当専門的知識や技量を必要とされる内容が含まれており、これが、研修を行えばよい、ということについては、相当問題があると思います。
やはり、「安全・安心の医療」を実現する立場で考えていく必要があると思います。