第763回:看護師の特定行為を考える(下)

地方政治新聞「民主香川」に、「史上最悪の社会保障改悪」というタイトルで、社会保障改悪の内容を連載しています。2015年10月18日号(第1686号)に掲載した、「第9回 看護師の特定行為について考える(下)」で、一部修正しています。

看護師の「特定行為」の問題点についての連載です。

従来は医師(歯科医師)にしか認められなかった医療行為のうち、「医師又は歯科医師が患者を特定した上で、看護師に手順書により特定行為を実施するよう指示」したものについては、一定の研修の後にそれを認める制度の事です。

現在でも、医師にしか認められない行為(「医行為」と呼びます)であっても、医師が個別に具体的な指示を行えば、実際に看護師が様々な医療行為を行っています。入院患者の場合、医師が常に患者のベッドサイドにいる訳ではありません。外来診療や検査を行っている場合、電話や院内ファックスを利用して看護師が病状の報告を行い、医師の具体的な指示の下に、看護師が注射その他の処置を行っています。

ですから、新しい制度は、本来なら医師が身近にいない環境、具体的には在宅医療が対象になるはずです。しかし、厚労省の議論を見ている限り、在宅に限らず適応しようとしていることが伺えます。

確かに、在宅医療では、常時医療従事者が患者のそばにいる訳ではありません。急変時などに主治医の医師や看護師、訪問看護ステーションの看護師などに連絡をする訳ですが、常に医師が最初に駆けつけるとは限りません。

看護師が最初に到着したら当然必要な処置を行う訳で、あらかじめ決められた手順に基づき、看護師の判断で医療処置が行われることになります。これは、医師にしかできない行為を、医師の指示のないままに看護師が行う訳で、厳密に言えば医師法に違反することになります。しかし、現実的には必要な医療行為です。

こういった矛盾を解決するために、一定の「医行為」を看護師が行うことを合法的にすることは、在宅医療を進める上で必要な処置だと思います。

問題は、

・大動脈内バルーンパンピングからの離脱を行うときの補助の頻度の調整

・一時的ペースメーカリードの抜去

・経皮的心肺補助装置の操作及び管理

・低圧胸腔内持続吸引器の吸引圧の設定及びその変更

・急性血液浄化療法における血液透析器又は血液透析濾過器の操作及び管理

・抗けいれん剤の臨時の投与

などの、相当専門的知識や技量を必要とされる内容が含まれており、これが、研修を行えばよい、ということについては、相当問題があると思います。

やはり、「安全・安心の医療」を実現する立場で考えていく必要があると思います。