第768回:国民健康保険制度の都道府県単位化について

香川県保険医協会報の「社保のコーナー」に、医療保険制度改革法に関する連載を行っています。2015年10月号掲載分で、一部修正しています。

「医療保険制度改革法」で決まった、国民健康保険制度の都道府県単位化を取り上げます。

2015年2月12日に開催された第5回「国民健康保険制度の基盤強化に関する国と地方の協議」の議論が元になっています。

国保財政の危機は、この30年間で国庫支出金が45%から25%に減らされたことが直接の原因です。

厚労省は、公費拡充等により財政基盤を強化する目的で、「毎年約3,400億円の財政支援」するとしています。

その内容は、低所得者対策として、15年度から消費税を使って毎年1,700億円を、18年度からは協会けんぽなどの後期高齢者支援金を総報酬制にすることにより浮いた1700億円を投入します。

これにより、被保険者一人あたり1万円の財政効果があるとしています。

一見、保険料が1万円安くなるように思えますが、全国の市区町村が国保財政の赤字を埋めるための法定外繰入れ額は3900億円ですから、それよりも少ないのです。

さらに、国保が都道府県単位になり、繰入れがなくなれば保険料が安くなることはありません。

また、15年度から(原資が消費税であるとはいえ)低所得者対策として1700億円が投入されたら低所得者の保険料がさがるかというと、その保証はありません。対象となる世帯の割合により市区町村に交付されるため、赤字の補填に使われる可能性が高いからです。

自治体キャラバンなどの自治体との懇談の中で明らかにしていく必要があります。