第1051回:口の健康を考える

善通寺市が発行する「広報ぜんつうじ」7月号の、ドクターからのアドバイス欄に「口の健康について」という文章を寄稿しましたので紹介します。善通寺医師会員が順番に寄稿するもので、2 ~ 3年に1回の割で回ってくるものです。

高齢化に伴い、徐々に体が弱り始めます。しかし、ある日突然介護が必要になるわけではありません。自立と、介護が必要となるまでの、中間的な状態があります。これを、「虚弱」状態を意味する英語のフレイルティから、「フレイル」と呼びます。

フレイル状態になるのを予防する取り組みでは、社会性が大事だといわれます。一人で運動するより、家族や仲間と運動するほうが効果的です。一人で食事するよりも、誰かと一緒に食事する方が効果があります。

栄養も大事ですが、とりわけ「口の健康」が重要です。「人は口から衰える」という言葉があります。高齢者が肺炎で入院すると、食事が誤って気管に入る(誤嚥)のを防ぐために入れ歯が外されます。これが長く続くと、口元がたるむ、口腔内(※)が乾燥する、舌も動きにくくなる、ますます呑み込みができにくくなります。

少し極端な例をだしましたが、口の健康、口腔機能は、健康で長生きするためには大変重要なことです。この口腔機能の低下を、オーラルフレイル、と呼びます。

オーラルフレイルに対する取り組みで最近話題になっているのが、「あいうべ体操」です。福岡市の今井医師が提唱したもので、大きく口を開けて「あ」「い」「う」といって、最後に「べ」と舌を前に突き出します。声に出す必要はありませんが、みんなで声を出す体操も楽しいかもしれません。

口の周りの筋肉や舌の運動を行うのが目的ですから「体操」と呼びます。これを1回10セット、1日3回行うと効果があります。小学校で実践したら、インフルエンザによる学級閉鎖が減ったという報告もあります(手洗いやうがいは当然ですが)。

※「口腔」の読みは正しくは「こうこう」ですが、医学の世界では「こうくう」と言います。

前回の文章は以下のアドレスを参照ください。
https://hiraihou.t-heiwa.com/?p=1815