第869回:肥満と腹囲

善通寺市から依頼を受け、「広報ぜんつうじ」の2017年3月号のドクターからのアドバイス欄に、「肥満と腹囲」と題して、以下のようにな文章を投稿しました。

市の検診を受けて異常を指摘された方など、結果に一喜一憂したり、年末年始で食べ過ぎて心配になっている方も多いのではないでしょうか。

肥満には、皮下脂肪型肥満と内臓脂肪型肥満があります。皮下脂肪は手でつかめますが、内臓肥満は手でつかんで確認することはできません。

メタボリック症候群を診断する基準は、腹囲が、男性の場合は85cm以上、女性は90cm以上になっています。これは、内臓脂肪がたまりすぎると、糖尿病や脳梗塞、狭心症や心筋梗塞などの生活習慣病を引き起こすため、内臓脂肪の蓄積を早期にチェックするのに腹囲の測定が簡便であるからです。

CT検査を行い内臓脂肪測定ソフトを用いて内臓脂肪を測定し、100㎠以上あれば内臓脂肪が蓄積していることになります。

腹囲と内臓脂肪値には関連があるため、メタボリック症候群の診断に腹囲が用いられるようになりました。

しかし、腹囲だけで判断すると、身長150cmの人と180cmの人の基準が同じことになり、やや「不公平」な気もします。また、女性で腹囲が90cm未満で、BMIが普通体重(注)であっても内臓脂肪が多いことはあり得ます(男性も同じです)。

東京大学公衆衛生学教室の報告によれば、20歳以降に体重が10kg以上増加した人は糖尿病になりやすいとされます。この傾向は、調査時点で適正な体重であっても、一時的にでも体重増加の時期があれば、糖尿病になりやすいということです。

肥満を是正する必要がないという意味ではありませんが、内臓脂肪はたまりやすく、減りやすいので、運動にも目を向ける必要があります。簡単な運動は歩くことです。

注:BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で、この値が18.5~25未満が、普通体重です。