毎週火曜日・金曜日更新予定。理事長ブログ

Monthly Archives: 11月 2017

第11回APHCO(アジア太平洋地域保健協同組合協議会)総会の報告です。

主催者あいさつを行う、デシュムク先生

初めに、シュシュリュシャ市民協同組合病院会長の、Subhash Dandekar さんの歓迎挨拶がありました。

シュシュリュシャ市民協同組合は2.5万人の組合員を擁し、病院を運営し、最新で高度な医療を提供し市民から信頼されている。現在、新たに120床の新しい病院をムンバイ市郊外に建設中であると紹介しました。また、加藤昭治先生(故人。注参照)との出会いで、多くの刺激を受けた、と日本の活動から多くのことを学んだと指摘しました。

続いて、ホスト国として十分な準備をしていただいた、APHCO理事のデシュムク先生から歓迎の挨拶がありました。

医療の営利化が進む中で様々な困難が生じているが、医療専門職の根本的かつ普遍的な価値と原則を再確認することがいま必要である。医療の基本的な考え方が営利本位の医療とは対照的なものであり、医師と患者の関係は、市場原理や社会の圧力や行政上の理由で妥協すべきではない。患者の福祉に向けて個人的に取り組むだけでなく、社会の福祉に向けてヘルスケアシステムを改善するために共同で取り組む必要がある、と発言しました。

注:医療福祉生協連の前身である日本生協連医療部会の国際活動、90年ころから盛んになり、世界の保健協同組合の組織作りに大きな役割を果たしてきました。ICA(国際協同組合同盟)の保健部門の専門機構として、96年11月にコスタリカでIHCO(国際保健協同組合協議会)が設立、97年8月にはネパールで、APHCOが設立されました。

APHCOの会長は、歴代の医療部会運営委員長である、加藤昭治氏(みなと医療生協)、髙橋泰行氏(医療生協かわちの)が担ってきました(本欄第455回、2011/10/18付)。

11月12日(日)、インド・ムンバイにて第11回APHCO(アジア太平洋地域保健協同組合協議会)総会が開催され、会長挨拶を行いました。

初めに、総会の準備で尽力していただいた、デシュムク先生とシュシュリュシャ市民協同組合病院のみなさんに感謝を述べました。また、ネパール地震や熊本地震に対する世界からの支援について感謝の意を表した後、以下のように述べました(大要)。

2016年11月、国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)は、「協同組合において共通の利益を形にするという思想と実践」を、ユネスコ無形文化遺産に登録することを決定しました。私たちの進める協同組合運動が世界的に評価されたことを率直に喜び、これからも広めていきたいと思います。

2016年11月、インド・ニューデリーで開催されたICA-AP(国際協同組合同盟アジア・太平洋地域)総会で、私はAPHCO会長の立場から、「ICAアジア・太平洋地域として、ICA本部に、どのような協同組合でも入りやすい会費体系になるように、会費の下限を下げることを要請して欲しい」と発言しました。引き続きこの問題に取り組んでいきたいと思います。

2015年9月に開催された「国連持続可能な開発サミット」で、今後15年間の繁栄と福祉の共有を促進するため、17の具体的な目標と、これに関連する169項目のターゲットを提案しました。それが、「持続可能な開発のための2030アジェンダ=SGDs」です。2030年に向けて「誰一人取り残さない」社会の実現を目指す取り組みです。協同組合はこの取り組みの有力なステークホルダーとして期待されています。

それぞれの国での、健康問題や高齢社会に対応する事業や活動の交流を行い、皆様の積極的な討論で総会が成功することを願っています。

ムンバイのホテルの会場前です。 廊下の花は手作りで飾られているものです。主催者の皆さんの心遣いが感じられます

地方政治新聞「民主香川」に、「社会保障はどうなるか」というタイトルで、社会保障改悪の内容の連載をしています。2017年10月15日号(第1758号)に掲載した、「安倍政権下の社会保障改悪を見る」の後半部分です。

この文章は、選挙公示前の10月9日に書いたものです。

(承前)

14年12月に施行された、「社会保障改革プログラム法」(持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律)では、「政府は、住民相互の助け合いの重要性を認識し、自助・自立のための環境整備等の推進を図るものとする」として、憲法25条に定められた、社会保障に対する国の義務を放棄してしまいました。

15年5月に施行された、「医療保険改革法」(持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法律)では、国保の都道府県単一化、医療費抑制を目的とする、医療費適正化計画を都道府県が策定し、地方自治体に社会保障費削減の責任を押しつけています。

政府の示した方針は「一人当たり医療費の地域差について、……地域差の縮減を目指す」で、具体的には「都道府県別の一人当たり医療費の差を半減させることを目指す」としています。一人当たり医療費の高い都道府県に引き下げを強要するとは、いわば「モグラたたき」方式であり、際限のない医療費引き下げ競争を都道府県に強要することになります。

17年度は、以下のような内容が実施されます。カッコ内の数値は国庫削減額です。

①70歳以上の高額医療費の自己負担引き上げ(224億円)

②後期高齢者医療制度の保険料軽減の縮小・廃止(187億円)

③65歳以上の療養病床入院時の光熱水費の自己負担引き上げと対象患者の拡大(17億円)

これらは法改正が不要な内容です。今後は、「改革工程表」に基づき、①外来時の医療費負担を、3割の法定負担に加え定額負担の上乗せをする「外来時の定額負担」制度の導入、②処方された薬剤に対して、先発品を選んだ場合後発品との差額を患者負担にする、③後期高齢者の患者負担を2倍にする(1割から2割)、などが選挙後に浮上してきます。

「日本を、取り戻す」から「社会保障を、取り戻す」結果を出したいものです。

地方政治新聞「民主香川」に、「社会保障はどうなるか」というタイトルで、社会保障改悪の内容の連載をしています。2017年10月15日号(第1758号)に掲載した、「安倍政権下の社会保障改悪を見る」の前半部分です。

この文章は、選挙公示前の10月9日に書いたものです。

10月10日公示で第48回衆議院選挙が始まりました。選挙の重要な争点の一つに社会保障のありかたがクローズアップされていますから、安倍政権の社会保障政策について考えてみたいと思います。

2014年12月9日に公表されたOECD(経済協力開発機構)の報告によれば「所得格差の拡大が社会・経済に及ぼす潜在的な悪影響が懸念され」「経済成長を大幅に抑制している」と述べています。そして、結論として、「租税政策や移転政策による格差への取り組みは、適切な政策設計の下で実施される限り、成長を阻害しない」としています。

「租税政策による格差への取り組み」とは、所得税など所得に応じて変動する税金を、低所得者や年金生活者には無税または税率を軽減する政策ということになります。消費税のように所得に関係なく負担する税を増やすことは、むしろ格差を広げてしまいます。

「移転政策による格差への取り組み」とは、社会保障の充実ということになります。

日本国憲法25条に「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」とあるのは、このことを意味しています。

高齢化や医療の高度化により、社会保障費は増加します。これを「自然増」とよびますが、ここに目をつけ、小泉政権時代には「痛みを伴う改革」と称して、5年間で1.1兆円の削減を行いました。一方、安倍政権下では、5年間で1.46兆円の削減(※)を行い、14年度からは、5%から8%への消費税増税が加わり生活や経営が苦しくなりました。まさに、社会保障改悪に邁進した5年間といってもよいと思います。

さらに、17年度でいえば、社会保障費の削減が1400億円、防衛費の増加が1400億円と数字的には見合った形になっています。

※:13年度2800億円、14年度4000億円、15年度4700億円、16年度1700億円、17年度1400億円

(次号に続く)

注:この文書は、総選挙公示前の10月9日に書いたものです。

香川県保険医協会報の「社保のページ」に、診療報酬に係る内容を連載しています。2017年10月号に掲載した内容です。

今回から、在宅医療を取り上げます。

在宅医療を担う中心である診療所の現状です。

06年に在支診(在宅療養支援診療所)が創設されました。届け出数は07年には1万件を超え、14年には1.47万件まで増加しましたが、その後頭打ちになっています。

在支診の届け出診療所で、実際に訪問診療を行っているのは92%、人数は1~9人が最も多く全体の約30%、全体の約半数が30人未満です。

訪問診療や往診などは、在支診の届け出をしていない診療所(以下、在支診以外と表記)の多くが担っています。診療所の数でいえば、訪問診療では半数近く、往診は60%、在宅での看取りも30%が、在支診以外が担っています。

患者数で見ると、在支診以外が、訪問診療の14%、往診の40%、在宅の看取りが22%を占めており、在支診以外が相当の役割を果たしていることがわかります。

体制面で見ると、在支診の平均的な職員数は、医師が1.3人、看護師は3.7人です。

在宅医療を実際に行っているにも関わらず在支診の届け出を行っていない最大の理由は「24時間の往診体制」です。そのため、今後在支診の届け出を行う予定はないのが83%です。

在宅医療と限りませんが、「地域包括診療料(加算)」を算定している医療機関に対する日本医師会の調査で、負担の大きい点として、50%が「在宅患者に対する24時間対応」と答えています。

一人の医師で24時間対応することが困難であることが、在宅医療の拡大を阻害している実態が見て取れます。