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Monthly Archives: 3月 2017

地方政治新聞「民主香川」に、「社会保障はどうなるか」というタイトルで、社会保障改悪の内容の連載をしています。2017年2月19日号(第1731号)に掲載した、介護保険制度に関する内容の前半部分です。

2017年1月27日付の「朝日」の「耕論」欄は、「介護保険 どこへ」と題して3人の意見を掲載しました。その中で、「急激な見直し 苦しむ現場」の見出しで、高松市の大西秀人市長の意見が掲載され、その考えに注目しました。

大西市長は、全国市長会の介護保険対策特別委員長で、厚生労働省の社会保障審議会の部会委員を務めており、その立場からの発言だと思います。

大西市長の主張は3点に分けられます。

一番目は、要支援1・2の一部サービスを全国一律の保険給付から市区町村の独自事業に移行している最中だが、民間事業者が手をあげてくれない、小さな町村では人材が少ない。その検証ができていない段階で「要介護1・2」の人向けのサービスの一部を地域支援事業に移すかどうかが議論された。あまりに時期尚早だと感じた、というものです。

二番目は、高松市では要介護1・2の人の約6割が認知症、サービスの対象を要介護3以上に限定するのは、簡単にはやらない方がいい、というものです。「保険料を払っているのに…介護保険のお世話になれない人が増えれば、保険としての信頼がなくなって」しまうと、述べています。

三番目は利用者負担の問題で、15年に一定所得以上の人の自己負担を1割から2割にしたばかりなのに、18年には現役並み所得者は3割になる。「必要なサービス利用を控える人も出て逆に重度化してしまう。そうなれば本末転倒です」と述べています。

(次号に続く)

2015年4月の介護報酬の改定は2.27%の引き下げでしたが、特別養護老人ホームの基本報酬は5.6%から6.3%のマイナス、8月からは改定前の10.7から13.7%のマイナスとなりました。看取り介護や介護福祉士の配置の加算、重度者の受け入れによる加算などがあるものの全体としてはマイナス改定でした。

また、特養の入所基準を原則要介護3以上とする、2015年8月からは、住民税非課税の低所得者対策の補足給付(食費や居住費の軽減措置)を、預貯金や配偶者の収入も勘案し補足給付を認めないなどの制度の変更を行いました。

その影響が、前回触れた、経済的な理由での退所の続出でした。

3月6日に、厚生労働省老人保健健康増進等事業を委託している、みずほ情報総研が、特別養護老人ホームの開設・運営状況に関する調査報告会を開きました。その中で、13.5%の施設が「職員不足」や「医療的ケアに対応できない」を理由に空きベッドがあると答えました。利用者が入院したり亡くなったり、緊急対応目的も含めて空きベッドがあると回答したのは、昨年11月時点で対象施設の4分の1にあたる143施設。空きの理由について「申込者が少ない」とした施設が9.8%ありました。

また、27日の報道によれば、厚生労働省が全国の都道府県を通じて調査したところ、16年4月の時点で特別養護老人ホームへの入所を希望している高齢者は、およそ36.6万人だったことがわかりました。これは4年前の52.4万人から15.8万人減少したことになります。

入所を希望している36.6万人のうち、認知症などの特例の基準を満たし、入所を希望している要介護1と2の高齢者はおよそ7.1万人ですが、自治体によっては人数を把握できていない場合もあるということです。

入所の条件を切り下げておいて希望者が減ったというのは、あまりにご都合主義と言わざるを得ません。速やかに入所基準の改悪を元に戻し、必要な介護報酬の引き上げを行うべきです。

高齢化に伴い、社会保障費は年間8千億円から1兆円増加します。この「自然増」を、政府は13年度から毎年5千億円程度に圧縮してきました。

15年度には、厚労省の概算要求8300億円に対し、予算案では3600億円と、4700億円圧縮しました。その中心は介護報酬2.27%の引き下げでした。

その影響がいくつかの報告で明らかになりました。

「シルバー新報」によれば、21世紀・老人福祉の向上をめざす施設連絡会(21・老福連)は、2月21日、2015年度の介護報酬改定・制度改正の影響に関するアンケート結果を、厚生労働省老健局と社会・援護局に提出しました。

全国の特別特養老人ホームや養護老人ホームなど約8700カ所の施設長を対象にアンケートを実施。1906カ所から回答があり、一定以上所得者の利用者負担引き上げや特養の補足給付の判定要件見直しなどによる自己負担増で、「費用の支払いが困難なため退所」(101件、5.2%)したケースがあった。21・老福連は、「低所得で要介護の高齢者にとって最後の砦である特養で、経済的理由により退所を余儀なくされている人がいるのはゆゆしき問題」と訴えた、と報じました。

「東京商工リサーチ」が1月11日に公表したデータによれば、2016年(1-12月)の「老人福祉・介護事業」倒産は、2000年の調査開始以来、これまで最多だった2015年(76件)の1.4倍増、108件と急増。

成長市場と注目されてきた老人福祉・介護事業だが、2015年4月の介護報酬改定や介護職員の人手不足が慢性化する中で業界内の淘汰の動きが強まっている、としました。

介護報酬引き下げに伴う、小規模事業者の経営困難、介護の担い手不足による事業継続の破たんなどが明らかになっています。

介護保険料あって介護保険なし、になりかけない状態です。速やかな介護報酬の引き上げが望まれます。

(この項、続く)

3月17日に、東電福島第1原発事故で群馬県内に避難した住民ら45世帯137人が、国と東京電力に対する損害賠償を求めた訴訟の判決が、前橋地裁でありました。

原道子裁判長は津波の予見可能性があったと認め、国と東電に対し、原告の一部(62人)に総額3,855万円の支払いを命じました。同様の訴訟には、全国で約30件約1万2千人が参加しており、集団訴訟としては初めての判決で、各地の裁判に大きな影響を与えることが予想されます。福島原発の集団訴訟で、国や東電の過失責任が認められたのは初めてです。

判決は、

・東電は遅くとも2002年7月から数カ月後の時点で事故の予見が可能だった

・国は遅くとも2007年8月の時点で、東電の対応では事故対応が達成されることは期待できないとの認識があった

として、「事故を防ぐことは可能で、国が規制権限を行使しなかったことは合理性を欠き、違法」としました。

11日に開催された、「東日本大震災六周年追悼式」における内閣総理大臣式辞で、安倍首相は「かけがえのない多くの命が失われ、東北地方を中心に未曾有の被害をもたらした東日本大震災の発生から6年の歳月が流れました」と述べたものの、原発事故には全く触れませんでした。

原発事故の収束も全く見えない中での、こういった無責任な態度は許されるものではなく、原発事故に対する国の責任を明らかにすべきです。

原発再稼働を許すな、の声を大きく上げていく必要があります。

香川県保険医協会の会報の2017年2月号の「主張」欄に掲載した文章を紹介します。一部修正しています。

2017年度予算案の内容が、徐々に明らかになってきました。この間、安倍政権は社会保障分野での国民への負担増と給付削減政策を進めてきました。

15年6月には「骨太方針」の閣議決定を行い、高齢化に伴う年間1兆円近い社会保障費の「自然増」を年平均5千億円に抑え込む「社会保障改革の工程表」を15年12月に策定しました。

これに加えて、年金額引き下げなどがあり、13年度から17年度の5年間で社会保障費の削減は3兆45百億円を超えます。

70歳以上の医療費窓口負担は、現行制度で既に1割から2割に順次引き上げられていますが、さらに負担上限額が引き上げられます。17年8月より、年収370万未満で住民税課税されている方は、1万2千円から1万4千円に(18年8月からは1万8千円)、370万円以上は4万4千円から5万7600円に引き上げられます。70歳以上の外来だけの窓口負担の上限も、縮小・一部廃止されます。

後期高齢者の保険料も、「所得割」の「軽減特例」(年金収入が153万~211万円)を17年4月からは現行の5割から2割に縮小、18年4月からは廃止されます。

療養病床に入院中の65歳以上の人の居住費を、1日320円から370円に引き上げます。長期入院であることを考えると影響は大です。

介護保険の利用料の上限を、「一般的な」所得の人(住民税課税世帯で年収383万円未満)の場合、17年8月より月3万72百円から、4万44百円に引き上げます。さらに、18年8月からは現役並み所得(一人暮らし、年収が340万円以上)なら、利用者負担が2割から3割に引き上げられます。

介護保険料も17年度からは、健保組合や協会けんぽなどの場合、加入者収入(報酬額)に応じた総報酬制に段階的に移行し、20年度からは全面的に導入するとされ、40歳から65歳までの方の保険料も引き上げられます。

医療・介護の改悪許すなの声を大きく上げていく必要があります。

注:2017年度予算案は2月27日の衆院本会議で、自民・公明両党などの賛成多数で可決し、参院に送付されました。憲法上の規定により予算は衆議院で議決されれば、参議院での議決がなくても参院送付後30日で自然成立するため、16年度内に成立することになりました。

 地方政治新聞「民主香川」に、「社会保障はどうなるか」というタイトルで、社会保障改悪の内容の連載をしています。2017年1月15日号(第1728号)に掲載した、医療事故調査制度に関する内容を再掲します。

15年10月より、「医療事故調査制度」が始まりました。この制度は、14年6月に成立した、医療法の改正に盛り込まれた制度です。

厚労省によれば、「医療事故が発生した医療機関において院内調査を行い、その調査報告を民間の第三者機関(医療事故調査・支援センター)が収集・分析することで再発防止につなげるための医療事故に係る調査の仕組み」とされます。

第三者機関である「日本医療安全調査機構(医療事故調査・支援センター)」が1月8日に発足後3ヶ月間の現況報告を行いました。

それによると、医療事故報告受付件数は、10月19件、11月26件、12月36件で累計81件でした。相談件数はそれぞれ250件、160件、187件で累計597件です。院内調査結果報告は10月なし、11月1件、12月6件で累計7件です。

制度が始まったばかりで、医療機関も様子見をしているのが実情だと思いますから、この数字が多いか少ないかについては、何とも言えないと思います。

しかし、実際に報告義務となるのは「当該病院等に勤務する医療従事者が提供した医療に起因し、又は起因すると疑われる死亡又は死産であつて、予期しなかったもの」ですから、死亡例以外は対象となっていません。また、遺族への説明や診療録への記載が適切に行われた場合も、報告対象となりません。

一方、制度発足後も個別事案の紛争解決、つまり責任追及のために本制度を利用しようとする動きがあるといわれています。

もともと、この制度は、死亡例に限らず、医療行為に伴う予期しない事態が発生した時に、原因究明や再発防止を目的とする制度として検討されたものです。医療従事者側の法的責任追及とは別に考える必要があります。

医療事故調査を行う第三者機関の創設を訴えてきた市民団体「患者の視点で医療安全を考える連絡協議会」(患医連)の永井裕之代表らは10月2日、医療事故調査制度に関して被害者・遺族らの相談窓口を設置すると発表しました。

永井代表によれば、「制度が国民から信頼される制度になるかどうかは、医療界・医療者が真摯に調査にとりくむかどうかにかかっているが、まだ多くの課題が残されている」と指摘しています。

国会での議論が不十分なまま成立した制度ですから、問題点は多いのですが、制度ができた以上、国民・患者の視点でよりよい制度に変えていく必要があると思います。今後の動きに注目する必要があります。

善通寺市から依頼を受け、「広報ぜんつうじ」の2017年3月号のドクターからのアドバイス欄に、「肥満と腹囲」と題して、以下のようにな文章を投稿しました。

市の検診を受けて異常を指摘された方など、結果に一喜一憂したり、年末年始で食べ過ぎて心配になっている方も多いのではないでしょうか。

肥満には、皮下脂肪型肥満と内臓脂肪型肥満があります。皮下脂肪は手でつかめますが、内臓肥満は手でつかんで確認することはできません。

メタボリック症候群を診断する基準は、腹囲が、男性の場合は85cm以上、女性は90cm以上になっています。これは、内臓脂肪がたまりすぎると、糖尿病や脳梗塞、狭心症や心筋梗塞などの生活習慣病を引き起こすため、内臓脂肪の蓄積を早期にチェックするのに腹囲の測定が簡便であるからです。

CT検査を行い内臓脂肪測定ソフトを用いて内臓脂肪を測定し、100㎠以上あれば内臓脂肪が蓄積していることになります。

腹囲と内臓脂肪値には関連があるため、メタボリック症候群の診断に腹囲が用いられるようになりました。

しかし、腹囲だけで判断すると、身長150cmの人と180cmの人の基準が同じことになり、やや「不公平」な気もします。また、女性で腹囲が90cm未満で、BMIが普通体重(注)であっても内臓脂肪が多いことはあり得ます(男性も同じです)。

東京大学公衆衛生学教室の報告によれば、20歳以降に体重が10kg以上増加した人は糖尿病になりやすいとされます。この傾向は、調査時点で適正な体重であっても、一時的にでも体重増加の時期があれば、糖尿病になりやすいということです。

肥満を是正する必要がないという意味ではありませんが、内臓脂肪はたまりやすく、減りやすいので、運動にも目を向ける必要があります。簡単な運動は歩くことです。

注:BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で、この値が18.5~25未満が、普通体重です。

2月28日付(第867回)で、小規模事業者にマイナンバーの管理を強要する総務省通達を問題にしましたが、3月2日に、1000人を超えるマイナンバーの紛失事件が報道されました。

NHKの報道によれば、神奈川県内の医療機関に勤める医師など医療従事者が加入する「神奈川県医療従事者健康保険組合」で、加入者1064人分のマイナンバーや氏名などの個人情報が入ったCD-ROMが紛失したことが2月17日に分かったそうです。

「誤ってゴミとして焼却処分されたと見られる」と組合は説明していますが、事実かどうかは不明です。

神奈川県医療従事者健康保険組合は、1954年に設立され、神奈川県下全域の809事業所の、被保険者が約7.2万人、扶養者が約3万人が加入しています。

ポケットに入れて容易に外部に持ち出すことのできるCD-ROMという媒体に、マイナンバーを含む個人情報をなぜ記録したのかは不明ですが、責任は重大だと思います。

組合事務局の職員規模は不明ですが、当然専任の担当者がいたはずで、それでもこういった事故が起きます。こういった重要な個人情報の管理責任を、小さな事業所に押し付けることには無理があると思います。

小規模事業所にマイナンバーの管理を強要する総務省通達は、速やかに撤回すべきです。