第742回:安保法制は廃案にすべきです

香川県保険医協会の機関紙である「香川県保険医協会報」の2015年7月号の「主張」欄に掲載した文章を再掲します。一部修正しています。

安倍政権は、国民の8割が「説明が不十分」(共同通信・日経新聞・読売新聞など)とする中で、集団的自衛権行使を具体化するための平和安全法制2法案(平和安全法制整備法案、国際平和支援法案)を衆議院で採決可決し、参議院に審議の場が移りました。

国会で論議が進むたびに、法案に「反対」、安倍政権「不支持」の声が広がる状態になっています。参考人として招致された憲法学者はもちろん、憲法の番人とよばれる歴代法制局長官、最高裁の元判事も、違憲であると意見を述べました。憲法違反の法律を国会で決めることは本来できないのです。

政治を進めるのは政治家であるという主張もありますが、政治の暴走を止めるのが憲法であり、日本国家は「立憲主義」でなりたっています。政治をコントロールするのが「憲法」ですから、こういった「暴走」は許されるべきではありません。

この法案に対して、大多数の憲法学者や弁護士などの専門家だけでなく、多くの国民、とりわけ若い世代が反対運動を全国各地で行っているのが特徴です。

国会の審議の中で明らかになったのは、集団的自衛権の行使は、時の政権の判断でいくらでも拡大できることです。アメリカ軍だけでなくオーストラリア軍も含むものとされ、地球の裏側までも自衛隊を派遣できることが明らかとなりました。

この法案が通れば、戦後70年間「平和国家・日本」が世界に果たしてきた役割を投げ捨てることになります。殺し殺されることの無かった自衛隊が、海外で殺し殺される軍隊となります。人道支援にとりくむNGOやNPO関係者が、攻撃の対象となる可能性も格段に増えます。

第2次世界大戦で、310万人の日本人の命が失われ、2,000万人を超えるアジアの人々の命が失われました。その痛恨の教訓から生まれたのが「憲法9条」です。憲法9条を「解釈」により、ないがしろにするべきではありません。いのちを大事にする医師として、声をあげていくべきではないでしょうか。