第740回:平和へのあゆみを止めることなく~70年目の8月15日にあたっての医療福祉生協連会長談話を紹介します

戦後70年、被爆70年の節目の年になる今年の8月15日を迎えるに当たり、日本医療福祉生協連会長理事として、歴史認識を明確にするため「談話」を出しましたので、紹介します。

タイトルは8月15日ですが、広島の原爆投下の日に合わせ、6日付で発出しています。

平和へのあゆみを止めることなく
~70年目の8月15日に~

2015年8月6日
日本医療福祉生活協同組合連合会
会長理事 藤原 高明

全世界に惨禍を招いた第2次世界大戦が終了して70年目の8月15日を迎えます。平和国家として歩んできたこの国のかたちを変えてしまう集団的自衛権行使の容認が閣議決定され、海外で戦争をする国づくりにつながる平和安全法制が審議される中で迎える8月15日です。全国の組合員・役職員のみなさんと、この70年の意味を考えてみたいと思います。

沖縄~辺野古新基地建設は許さない

日本で唯一の地上戦を経験し県民の4人に1人が犠牲となり、“銃剣とブルドーザー”によって奪われた土地につくられた米軍基地は70年にわたって沖縄のひとびとを苦しめてきました。

翁長雄志沖縄県知事は、菅官房長官との会談で米軍基地用地接収の経緯に触れ「自ら奪って県民に苦しみを与えておいて、普天間基地は世界一危険だから、危険性除去のために沖縄が負担しろ、代替案は持っているのかと。こういった話をすること自体、日本の政治の堕落ではないのか」と述べました。この言葉は、政府に向けられたものですが、その重みを受け止め、沖縄のひとびとに連帯しなくてはなりません。

私は改めて普天間基地に代わる辺野古への新基地建設に反対を表明するとともに、「沖縄の土地も海も森も川もすべて沖縄のひとびとに返せ」と、強く主張したいと思います。

 

広島、長崎、福島~核兵器廃絶と原発廃炉を求める

この70年は、広島、長崎への原爆投下からの70年でもあります。広島の原爆死没者慰霊碑の「安らかに眠って下さい 過ちは 繰返しませぬから」という誓いは、「全人類の過去、現在、未来に通ずる広島市民の感情であり良心の叫び」であり続けました。

2009年4月にオバマ大統領は、プラハ演説で「米国が核兵器のない平和で安全な世界を追求すると約束します。私たちは保有量を減らす作業を始めます」と述べましたが、核兵器削減に向けた具体的な動きは中断しました。今年のNPT(核不拡散条約)再検討会議では、核兵器廃絶をめざした合意文書は採択されませんでしたが、会議の開催に向けて市民社会グループは大きな役割を果たしました。潘基文国連事務総長はその役割を評価し、「感謝」と「全面的な支持」を表明しました。

人類にとって核エネルギーが制御不可能なものであることを示したのが、東京電力福島第1原子力発電所事故でした。事故の根本原因が究明されない中で、再稼働を急ぐ政府や電力会社の姿勢には怒りを禁じ得ません。

被爆70年にあたり、非人道的な核兵器の廃絶を求めるとともに、各生協が被爆の実相を継承する活動に、これまで以上に力を入れることを呼びかけます。そして、全ての原発をただちに廃炉にすることを求め、今なお苦しみの中にある福島のひとびとへの一層の連帯を表明します。

 

平和安全法制~憲法違反の法案は廃案に

参議院で審議されている平和安全法制は、昨年7月1日に閣議決定された集団的自衛権の行使を具体化するためのものです。法案に反対あるいは慎重審議を求める議会意見書も多数採択されています。幅広い世代の多くの団体・個人が法案を批判し、いずれの世論調査でも過半数が法案に反対の意思表示を行っています。

安倍首相は北朝鮮や中国を名指しして、「抑止力」としての法案の必要性を強調しています。しかし、「武力には武力で対抗するしかない」という主張は思考停止に等しく、国家間の緊張関係を拡大し偶発的な衝突を生みかねない危険なものです。そして、武力の行使が「限定的・必要最小限」で終わるものでないことは、日本国民が身をもって体験したことです。いま必要なのは、外交努力を重ね相互理解によって信頼関係を構築することです。「憲法9条こそ平和を守る最大の力」であることを確信し、平和安全法制を廃案にするため全力をあげましょう。

 

日本国憲法と平和~いまこそ立憲主義と平和の意味を考えるとき

70年前の8月15日は日本の歴史の大きな転換点であり、歴史の歯車が回ったといえる日でした。同時に、アジアのひとびとにとっては日本帝国主義からの解放の日であり、多くの日本国民にとっては生命・財産を奪われる戦争が終わった日でした。

日本国憲法は、「わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意」した日本国民の間に、70年間にわたって定着しています。

国際関係は複雑さを増していますが、日本がこの70年間、戦闘行為によって殺し殺される国で無かったことは、世界に誇るべき事です。

日本医療福祉生活協同組合連合会設立趣意書は、「人権の尊重と社会保障の充実をめざして行動します。いのちと健康を脅かす戦争に反対して行動します」と述べています。私は、会長理事として「健康をつくる。平和をつくる。いのち輝く社会をつくる。」という理念を実現するために行動することを改めて決意し、会員生協にも行動を呼びかけるものです。

以上