第736回:薬の飲み残しを考える

在宅医療に取り組んでいると、いつも問題だと思うことがあります。それは、お家に残った大量の薬剤です。

例えば、こんな処方は如何でしょうか(私の処方は脇に置いておきます)。

1.A          1錠    起床後すぐ(服薬後30分間は座ったままで)

2.B          1錠    朝食後

3.C          1回1錠 毎食前(1日3錠)

4.D          1回1錠 毎食後(1日3錠)

5.E          1回1袋 毎食間(1日3袋)

6.F          1回1錠 朝食後と夕食後(1日2錠)

7.G          1回1錠 就眠前

こんなのきちんと飲めるか、というのが大方の意見だと思います。

処方した薬剤が残る理由にはさまざまなものがあります。

・上記の、飲み方が複雑できちんと飲めない処方が行われる。あるいは、その飲み方が理解できない

・長期投薬が可能となり、一度に多量の薬剤が処方される。84日分/90日分処方というのは、大病院では珍しくありません。

・医療機関が、残った薬剤について聞くことは少ない。

・医療機関が確認しても、患者・家族は「残っているが、量はわからない」と答えるため、やむを得ず再び大量の薬剤を処方する。

・飲み忘れに気づいた時の対応が分らないので、結果として薬が残る。

・調剤薬局でも、残薬について丁寧に対応するところは少ない。

この問題が、7月22日に開催された、中央社会保険医療協議会 第174回「診療報酬基本問題小委員会」(注)で俎上に上りました。その中で、「リフィル処方箋」が取り上げられています。

その背景として、「経済財政運営と改革の基本方針2014」(2014年6月24日閣議決定)では、「薬剤師が処方変更の必要がないかを直接確認した上で一定期間内の処方箋を繰返し利用する制度(リフィル制度)等について医師法との関係に留意しつつ、検討する」ことが提起されました。また、「規制改革実施計画」(2015年6月30日閣議決定)では、「リフィル処方せんの導入や分割調剤の見直しに関する検討を加速し、結論を得る」とされました。

リフィル処方箋とは、1枚の処方箋を予め定めた回数、何度も使用できるというもので、米国では普通に使用されています。

例えば、降圧剤Aを28日分処方し、その処方箋を3回まで使用できる、とすると、7月24日に発行した処方箋が、8月にも9月にも使用できることになります。しかし、その間の健康状態の把握はすべて薬剤師にゆだねられることになります。途中で、心筋梗塞や脳卒中が発症した場合、誰が責任を取るのかという問題が生じます。

現行の、保険医療機関及び保険医療養担当規則によると、「投薬量は、予見することができる必要期間に従ったものでなければならない」とされています。従って、投薬期間が28日なら、28日間しか「予見していない」ことになり、そのあとは医師の責任ではないということになるはずです。しかし、現在の風潮からすればそうはならないでしょう。28日×3回分なら、84日分の責任を負うことになります。

それなら、84日分処方をすればよい訳で、リフィル処方箋については、もう少し現場の声を聞く必要があるのではないでしょうか。

 

注:下記のHPを参照ください。

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000092094.html