第723回:介護保険改定について(その2)

香川県保険医協会は機関紙「香川県保険医協会報」の「社保のページ」に介護保険改定に関する連載を行っています。

2015年3月号に掲載した内容を転載します。内容的にはこれまでの「飛来峰」の内容と重複します。

2015年4月1日から、特別養護老人ホーム(指定介護老人福祉施設、以下「特養」)への入所制限が行われます。「限られた資源の中で、より入所の必要性の高い方々が入所しやすくなるよう」に、というのが厚労省の方針です。

従来から、特養の入所については、「介護の必要の程度及び家族等の状況を勘案し、……必要性が高いと認められる入所申込者を優先的に入所させる」(1999年厚生省令第39号)としてきました。そして、「入所の必要性の高さ」については「要介護度を勘案する」(2001年8月の計画課長通知)としてきました。

しかし、要介護度が低ければ入所対象としない、ということではなかったはずです。大きな制度の後退と言えます。

それでは、要介護1・2の場合はどうなるのかというと、「市町村の適切な関与の下、施設ごとに設置している入所検討委員会を経て」、「特例入所」を認めることになります。日常生活に支障をきたすような認知症や、家族の虐待や単身世帯などの「特例」に限り、入所できる可能性があります(検討委員会の判定によります)。

入所判定時に要介護3であったが入所前日までに要介護1・2と判定が変更された場合、「特例」に該当しない場合は入所できません。現在入所中の要介護1・2の入所者も、入院などの事情でいったん退所すると、再度入所申込みが必要になり、再入所できるかどうかはわかりません。

現在入所中の要介護3以上の方が更新審査により要介護1・2に判定されても継続して入所可能ですが、4月1日以降に入所した方が更新審査により要介護1・2に判定された場合は、原則として自動的に退所となります。

要介護1・2の方が「特例入所」の対象であると考えて入所申込みした場合、市町村が対象ではないと判断したなら、「不服申立て」はできません。現在の介護認定システムの中で、介護度の判定に不服がある場合は、申し立てができますが、制度面から見て大きな後退といえます。

「介護保険料あって、介護保険なし」の制度改悪と言えます。