第699回:社会保障を大本から破壊する「医療・介護総合法」(その8)

地方政治新聞「民主香川」に、〈社会保障を大本から破壊する「医療・介護総合法」〉というタイトルで、連載しています。2014年12月に掲載した「第8回」で、一部修正しています。

 昨年の10月10月付本欄(第684回)の後半で触れた、2014年7月28日に開催された全国介護保険担当課長会議の続きですが、一定以上所得者の利用者負担、特別養護老人ホームの「特例入所」に係る国の指針(骨子案)が提起されました。

一定以上所得者の利用者負担については、「これまで一律1割に据え置いている利用者負担について、相対的に負担能力のある一定以上の所得の方の自己負担割合を2割とする」としています。

具体的には「モデル年金や平均的消費支出の水準を上回り、かつ負担可能な水準として、被保険者の上位20%に該当する合計所得金額160万円以上の者(単身で年金収入のみの場合、280万円以上)を基本として政令で定める」としています。

しかし、会議に提出された資料を見ても、無職夫婦高齢者の場合、年間収入250万円未満の場合、可処分所得150万円に対して消費支出193万円、250万円から349万円の場合、可処分所得197万円に対して消費支出247万円ですから、預貯金を取り崩して生活している実態が現れています。

6月5日の参院厚生労働委員会の質疑(小池参院議員・共産)では、介護保険部会の委員でもある淑徳大学の結城康博教授のアンケートの内容が紹介されています。

「ケアマネジャー中心とする介護職に利用料負担に関するアンケートをやっています。高齢者における高所得者といった場合、一人当たりの年収、課税前ですが、どの程度をイメージするかという質問に対して、200万から300万、これ選んだ人は全体の17%です。300万円を超えるラインを選んだ人が76%で、中でも500万円以上という方が一番多かったわけです」

このまま2割負担が強要されたら、介護保険を利用できなくなる人が続出することは間違いありません。

特別養護老人ホームの「特例入所」とは、特別養護老人ホームへの新規入所が「原則要介護3以上に限定することとなるが、要介護1又は2の方であっても、やむを得ない事情により指定介護老人福祉施設以外での生活が著しく困難であると認められる場合に」判定会議を行い、「特例」で入所を認めるというものです。

しかし、介護が必要であっても、入所できなければ自宅でいる以外なくなる訳で、けっして許すことはできないと思います。

これからも、問題にしていく必要があります。