香川県保険医協会報2021年2月号の「主張」欄に、「3次補正予算の問題点を考える」と題する文章を掲載しました。紹介します。
1月7日に首都圏を中心に発出された緊急事態宣言は、その後対象地域を広げ期間延長を行うなどし、10都府県で継続されています。その中で1月28日に19兆円規模の第3次補正予算が成立しました。
外来の小児診療等の評価やコロナ感染患者の転院支援など、評価すべき点もありますが、ここでは問題点を中心にみていきたいと思います。
感染拡大防止策については4分の1の4.4兆円に過ぎません。当初は「雇用調整助成金」の特例措置や、「持続化給付金」「家賃支援給付金」の打ち切りが予定されていましたが、世論の反発により、特例措置の延長や「給付金」の申請期限が延長されましたが、十分なものとは言えません。
とりわけ、減収により経営的に困難状況に陥っている医療機関に対する減収補填ではなく、「緊急包括支援交付金」(病院100万円・診療所50万円)などの形で、新たに購入したものに対する補助となっています。しかし、多くの医療機関では収入そのものが減少していることが問題なので、あくまで直接的な支援が必要だと思います。
厚労省の予算(案)を見ても、ワクチン接種体制の整備や、雇用調整助成金関連など必要と思われるものもありますが、「デジタル改革の実現」と称して、デジタル化・データ連携の推進、保育分野のICT導入支援、ゲノム解析、介護分野等へのロボット等導入など、緊急性にかけるものも多々あります。
とりわけ問題と思われるのは、国土交通省関係の内容です。ポストコロナに向けた経済構造の転換などに1.4兆円、国土強靭化推進に1.8兆円などです。GO TO トラベル事業に1兆円を投入するなど、緊急事態宣言を延長せざるをえない状況のなかでは、まさに不要不急の事業です。国土強靭化では、「流域治水」等の推進、南海トラフ地震や首都直下地震対策、官公庁施設の耐災害性強化など、重要な内容であったとしても、補正予算で対応する必要はありません。
予算が成立しても、不要な内容は執行させない運動が重要です。
※2月11日時点での情報に基づいたものです。