第1052回:参院選後の社会保障について考える

香川県保険医協会報2019年7月20日号(No.416)の「主張」欄に、「社会保障改善の取り組みに力を入れましょう」という文章を書いたので、転載します。

この文章は参院選投票日直前に書いたので、選挙情勢については殆ど触れていません。

今後の社会保障について考えてみたいと思います。

10月からの消費税増税は「骨太方針2019」に明記されました。安倍首相は参院選で、「税収は今年、過去最高」「バブル時代も超えた」と演説しました。一般会計の総税収は1990年に比べ60.1兆円から60.4兆円に伸びましたが、法人税は33%減、所得税は23%減少、消費税は284%増で、3.8倍になったことが主因です。

消費税は「社会保障に対する安定的な財源を確保する」ためといいますが、第2次安倍内閣以来の7年間、社会保障費は4兆円余り削減され、この先も社会保障の給付抑制、負担増を実施する計画が目白押しです。

「骨太方針2018」では、「後期高齢者の窓口負担の在り方について検討する。介護のケアプラン作成、多床室室料、介護の軽度者への生活援助サービスについて、給付の在り方を検討する」とし、具体的には、75歳以上の医療費の窓口負担の原則2割化、受診時定額負担、薬剤負担の見直しなどが本格化されます。

5月に成立した医療保険制度等の改革法では、マイナンバーカードを、保険証利用時の本人確認と資格確認に利用することを強制しかねない仕組みが作られました。

介護保険では、要介護1・2の利用者の生活援助の保険外し(総合事業への移行)や、利用料2割負担化が検討され、19年末には結論を得るとされています。

国民健康保険制度の都道府県統一化が行われましたが、法定外繰入等の解消が求められ、今でも高すぎる保険料負担がさらに増えていくことが懸念されます。

参院選直前に争点となった年金の問題もあります。年金受給開始の時期については、70歳以降も選択できるよう範囲を拡大する。年金もマクロ経済スライドの実施で給付を抑制し、2043年の基礎年金給付額が7兆円の削減となることが明らかになっています。

消費税増税をこのまま許すのか、社会保障分野での改悪を許すのかが大きな問題になります。この秋、国民的な運動を広げていく必要があります。