第1043回:国民健康保険制度を考える(その1)

地方政治新聞「民主香川」に、「全世代直撃の社会保障改悪」というタイトルで、社会保障関連の内容の連載をしています。2019年6月16日付(第1816号)に掲載した、「国民健康保険制度を考える」(その1)の前半です。

4月12日、厚労省保険局国民保健課が「平成29年度国民健康保険(市町村)の財政状況について」という文書を公表しました(※)。

それによると、収支状況は、単年度収入額が15兆3,559 億円、単年度支出額が15兆1,253億円で、決算補填等目的の法定外一般会計繰入金を除いた場合の精算後単年度収支差引額が450億円の赤字としました。国民健康保険料(税)収納率は、92.45%で前年度から0.53ポイント上昇していました。

保険料の滞納世帯数に関する統計では、滞納世帯の全世帯に対する比率は、2013年(各年の6月1日現在の数値)が18.1%、18年が14.7%と減少、短期被保険者証交付世帯は、13年が5.7%、18年が4.1%、資格証明書交付世帯は、13年が1.3%、18年が0.9%と減少しています。

これらの数値が減少していることが、「改善」ととらえてよいのかどうかは不明ですが、国保保険料の収納率は、1977年度が95.01%に対し、2017年度が92.45%です。国民皆保険制度になった1961年から2017年度までの間の収納率の最高は1973年度の96.47%、最低が2009年度の88.01%ですから、最悪の数値から脱した状態というのが正しいようです。

また、収納対策として、税の専門家の配置、多重債務相談の実施、財産の差し押さえの実施等が行われるようになったのも一因です。

民医連(全日本民主医療機関連合会)は3月6日の記者会見で、経済的理由で治療が手遅れになり死亡に至ったケースが2018年に77事例あったと発表しました。それによると、77事例のうち正規の健康保険証がある、もしくは生活保護利用の人が39例。無保険や短期保険証などが38例で、受診前の保険種別でみると3割を占めます。

山本淑子事務局次長は、事例の特徴として、地域で孤立している、保険料の滞納や差し押さえがある、生活困窮者自立支援法に基づく支援が不十分、障害など複合的な困難―などがあると明らかにしています。

※建設国保などと区別するため、(市町村)とカッコ付けしています。

(次号に続く)