第1032回:診療報酬にみる「入院から在宅へ」の流れ(23)

地方政治新聞「民主香川」に、「全世代直撃の社会保障改悪」というタイトルで、社会保障関連の内容の連載をしています。2019年4月21日付(第1811号)に掲載した、「入院から在宅へ」の流れを考える(その12)の後半です。

FIM(機能的自立度評価法)の評価項目は、運動項目と認知項目の計18項目があり、各項目を1点〜7点の7段階で評価します。「一定の水準」を評価するのにはFIMの運動項目が用いられ、13項目あるので「満点」なら13×7で、91点になります。

もともとADLが高いもの(76点以上)、低いもの(20点以下)、高齢者(80歳以上)、認知機能の障害が大きいもの(FIM 認知項目24点以下)は除外できます。1回の入院あたりのFIMの運動項目の得点を入院時と退院時に計算し、その変化で評価するものです。計算式はややこしいので省略しますが、いずれにしても、効果が見込める患者をセレクトする危険性は否めません。

16改定の結果がどうであったか、17年10月25日に開催された第365回中央社会保険医療協議会で報告された内容から見ると、回リハ病棟に入院する患者の約7割が75歳以上、最も点数の高い「入院料1」では脳梗塞が一番多く、ついで脊髄損傷を除く骨折・外傷などでした。認知症高齢者の日常生活自立度では、「Ⅲ以上」(※)が2割を占めていました。

高齢で、リハビリ効果がすぐに出るとは限らない疾病が多く、認知症も少なくないという中でのリハビリに「実績」を求めるのは、かなり無理のある制度ではないかと思います。

医療機関としては、制度改変に合わせた「対応」を行いますから、17年は15年に比べ、重症患者で退院時の日常生活機能評価が入院時より改善した患者が多い、平均在院日数も短い、在宅復帰率も高い、など「成果」はでていると思います。しかし、これらは入院時の患者のセレクトがなかったのかどうか、患者の満足度はどうかなど、多面的に検討する必要があると思います。

その他、16改定では、摂食機能療法の経口摂取加算、ニコチン依存症管理料でも「成果主義」と言える評価が導入されました。


※認知症高齢者の日常生活自立度

Ⅰは認知症があっても日常生活がほぼ自立している。

Ⅲは日常生活に支障があり介護が必要、です。