第1009回:診療報酬にみる「入院から在宅へ」の流れ(13)

地方政治新聞「民主香川」に、「全世代直撃の社会保障改悪」というタイトルで、社会保障関連の内容の連載をしています。2018年11月11日付(第1797号)に掲載した、「入院から在宅へ」の流れを考える(その7)の後半です。

08年4月に後期高齢者医療制度が発足、それに伴い診療報酬でも「後期高齢者」を冠する項目ができました。一般病棟に入院中の後期高齢者を対象に「後期高齢者退院調整加算」などです。08年には、療養病棟等に入院している患者等を対象に「退院調整加算」も新設されました。

後期高齢者医療制度は、ネーミングや保険料の問題など、国民の大きな批判を浴びたこともあり、10年改定では「後期高齢者」を冠する項目は廃止されたり、対象を広げ名称を変更するなどが行われました。

 08年改定時に「後期高齢者退院調整加算」が新設され、長期入院になりがちな高齢者や等を対象に、入院初期から退院に向けた流れを作りました。10年改定では、急性期病院からの退院について、65 歳以上の患者または40 歳以上の介護保険の特定疾病の患者(注3)を対象に「急性期病棟等退院調整加算」が新設されました。年齢と対象をひろげ、適切な退院先や介護サービスの導入に係る退院調整を行うことを評価したものです。

また、NICU(注4) からの在宅復帰支援・調整に「新生児特定集中治療退院調整加算」が新設されました。集中治療室に長期入院患者が増えると、時には満床状態になり新規受け入れが困難となることがあるため、適切な病院に転院したり、必要な社会福祉サービスを調整し在宅へ移行できるようにするために、社会福祉士等の配置を義務づけたものです。

08年改定で創設された、療養病棟等に入院中の患者を対象にする「退院調整加算」は、10年改定で「慢性期病棟等退院調整加算」と名称が変更になり、転院・退院がスムーズに行えるような体制の整備が義務付けられ、社会福祉士の配置を施設基準に求めるようになりました。

注3:40歳以上の介護保険の特定疾病の患者
介護保険は、65歳以上は疾病に関わらず対象になるが、40歳以上65歳未満では、がん(末期)、関節リウマチ、脳血管疾患など16の疾病が対象となる。なお、この「加算」の対象になるのは特定疾病に該当するかどうかであり、介護保険の認定や利用はなくてもよい。

注4:NICU
新生児集中治療室のこと。低出生体重児や重篤な疾病をもつ新生児の集中治療を行う。