第983回:診療報酬にみる「入院から在宅へ」の流れ(3)

地方政治新聞「民主香川」に、「全世代直撃の社会保障改悪」というタイトルで、社会保障関連の内容の連載をしています。2018年6月17日(第1782号)に掲載した、「入院から在宅へ」の流れを考える(その2)の前半部分です。

前回(970回。6月5日付)の最後の部分で、1983年2月に老人保健法が施行され、70歳以上の者及び65歳以上の寝たきり老人のみに適応される老人診療報酬点数表が創設されたことについて触れました。

高齢者の医療や福祉については、63年に施行された「老人福祉法」により政策が作られてきました。老人福祉法の目的は、第一条で、「老人に対し、その心身の健康の保持及び生活の安定のために必要な措置を講じ、もつて老人の福祉を図ること」であるとされていました。

そして、その基本的理念は、第二条で「老人は、多年にわたり社会の進展に寄与してきた者として、かつ、豊富な知識と経験を有する者として敬愛されるとともに、生きがいを持てる健全で安らかな生活を保障されるものとする」となっていました。

83年2月に施行された「老人保健法」では、目的は第1条で「国民の老後における健康の保持と適切な医療の確保を図るため、疾病の予防、治療、機能訓練等の保健事業を総合的に実施し、もつて国民保健の向上及び老人福祉の増進を図る」とされおり、この部分は特別問題となる表現ではありませんが、基本的理念は大きく書き換えられました。

理念は、第二条の1項で、「国民は、自助と連帯の精神に基づき、自ら加齢に伴つて生ずる心身の変化を自覚して常に健康の保持増進に努めるとともに、老人の医療に要する費用を公平に負担するものとする」となっています。

つまり、基本的理念が、「生きがいを持てる健全で安らかな生活を保障されるもの」から、「老人の医療に要する費用を公平に負担するもの」になったのです。老人医療の有料化から始まる際限のない負担増の大本はここにあるのです。

そして、2006年6月に成立した「健康保険法等の一部を改正する法律」の第7条の規定により、「老人保健法の一部改正(08年4月施行)」で、題名が「高齢者の医療の確保に関する法律」に改められ、「後期高齢者医療制度」が創設されることになりました。

(次号に続く)