第969回:診療報酬にみる「入院から在宅へ」の流れ(1)

地方政治新聞「民主香川」に、「全世代直撃の社会保障改悪」というタイトルで、社会保障関連の内容の連載をしています。2018年5月20日(第1779号)に掲載した、「入院から在宅へ」の流れを考える(その1)の前半部分です。

厚労省は、医療費削減を目的として「入院から在宅へ」の仕組みづくりに力を入れています。今回の診療報酬改定で、入院日数を短くするための仕組みの「退院支援」を「入退院支援」と変更しました。入院する前から対策をとろうという訳です。その理由と背景について考えてみます。

17年12月8日に開催された第377回中医協(中央社会保険医療協議会)総会に提出された資料によれば、「従来の退院支援については、入院前の外来・在宅~入院中~退院後の外来・在宅まで、切れ目のない支援が重要であることから、『入退院支援』との呼称に改め」る。「入院前の支援の例として、入院生活の説明、持参薬の確認、入院前に利用していたサービス等の確認などが想定される」としています。


在宅医療を推進することを意味する「川上から川下へ」という言葉もよく使われます。

13年8月6日、「社会保障制度改革国民会議報告書」が出され、以下のように、入院医療が取り上げられています。

Ⅱ 医療・介護分野の改革

1 改革が求められる背景と社会保障制度改革国民会議の使命

(3)改革の方向性

② 機能分化とネットワークの構築
の項の中で

・「病院完結型」の医療から「地域完結型」の医療への転換が成功すると、これまで1 つの病院に居続けることのできた患者は、病状に見合った医療施設、介護施設、さらには在宅へと移動を求められることになる。

・居場所の移動を伴いながら利用者のQOLを維持し家族の不安を緩和していくためには、提供側が移動先への紹介を準備するシステムの確立が求められる。ゆえに、高度急性期から在宅介護までの一連の流れ、容態急変時に逆流することさえある流れにおいて、川上に位置する病床の機能分化という政策の展開は、退院患者の受入れ体制の整備という川下の政策と同時に行われるべきものであり、川上から川下までの提供者間のネットワーク化は新しい医療・介護制度の下では必要不可欠となる。

・そして、こうしたネットワークの中で、患者の移動が円滑に行われるよう、医療機関側だけでなく、患者側にもインセンティブが働くシステムとなることが望ましい。