第968回:「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」について(その2)

地方政治新聞「民主香川」に、「全世代直撃の社会保障改悪」というタイトルで、社会保障関連の内容の連載をしています。2018年4月15日(第1776号)に掲載した、「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」の後半部分です。一部修正しています。

(承前)

これまでのガイドラインでは、
・医師等の医療従事者から適切な情報提供と説明がなされ、それに基づいて患者が医療従事者と話し合いを行った上で、患者本人による決定を基本とする
・人生の最終段階における医療及びケアの方針を決定する際には、医師の独断ではなく、医療・ケアチームによって慎重に判断する

こと、となっていましたが、今回の改定では、病院における延命治療への対応を想定した内容だけではなく、在宅医療・介護の現場で活用できるように見直されました。
・医療・ケアチームの対象に介護従事者が含まれる
・心身の状態の変化等に応じて、本人の意思は変化しうるものであり、医療・ケアの方針や、どのような生き方を望むか等を、日頃から繰り返し話し合う(=ACPの取組)
・本人が自らの意思を伝えられない状態になる前に、本人の意思を推定する者について、家族等の信頼できる者を前もって定めておくことの重要性を記載
・今後、単身世帯が増えることを踏まえ、上記の「信頼できる者」の対象を、家族から家族等 (親しい友人等)に拡大
・繰り返し話し合った内容をその都度文書にまとめておき、本人、家族等と医療・ケアチームで共有することの重要性について記載すること

とされました。

診療報酬の中では、訪問診療料の「在宅ターミナルケア加算」、訪問看護の「ターミナルケア加算」などの算定要件、療養病棟入院料と地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料1,3の施設基準について、同ガイドラインに基づく「看取りに関する指針」を定めることが追加されました。

また、療養病床の在宅患者支援療養病床初期加算、地域包括ケア病棟入院料・入院借り料の在宅患者支援病床初期加算について、同ガイドラインを踏まえ、入院時に治療方針に関する意思決定支援を行うことが算定要件とされました。

患者・利用者の「自己決定」を尊重するという点では、重要なことだと思います。

ただ、「改革工程表」の中では「Advance Care Planning(ACP)の普及を図る」と位置付けられており、あらかじめ明示された本人の意思に反した医療・介護が、制限されるなど問題になる可能性もあるため注意が必要です。