第947回:全世代直撃の社会保障改悪(その5) 診療報酬等のわずかなアップでは社会保障は充実しません(下)

地方政治新聞「民主香川」に、「全世代直撃の社会保障改悪」というタイトルで、社会保障関連の内容の連載をしています。2018年1月21日(第1767号)に掲載した、「診療報酬等のわずかなアップでは社会保障は充実しません」の後半部分です。一部修正しています。

(承前)

一般病棟の入院基本料7対1、10対1は、民間・公的病院(国公立を除く)でも、損益差額が前回、今回調査ともに連続して赤字で、病院経営は危機的状況にあるといえます。

大病院も例外ではありません。近畿大学が大阪狭山市にある医学部と付属病院(929床)を堺市の泉北ニュータウンに新病院を建設し移転、現在の付属病院を300床の分院として存続させるという従来の計画を変更、大阪狭山市の病院閉鎖を検討していることが、17年12月に明らかになりました。

この件について、近大は「人的不足および経済的要因のため、大阪狭山市の病院の閉鎖、新病院の病床数を800床へ縮小、医学部堺病院の経営譲渡などを検討する旨の計画の変更を、11月29日に大阪府知事あてに申し入れました」と発表し、大問題になっています。

民間・公的病院の中小病院は医業収益が減少、特に小規模病院の医業収益の減少が大きく、損益差額が赤字に転落しており、地域で身近な小規模病院の存続が危ぶまれる事態になっています。

前回、調剤医療費の増加を問題にしましたが、すべての調剤薬局が大儲けしている訳ではありません。個人立の薬局では給与費の圧縮により+0.4%ですが、全体の9割以上を占める法人立では▲0.6%と減収になっています。ただ、同一法人における店舗数別でみると、20店舗以上の薬局の損益状況は12%以上となり全体平均を大きく上回り、「1店舗」および「2〜5店舗」の薬局の損益状況は4%前後と非常に小さくなっています。

患者・利用者と気軽に相談に乗れる、「街のお薬屋さん」が苦戦している状況が表れているようです。

いずれにしても、本体0.55%の増では「医療崩壊」と呼ばれる状況の改善には遠く及ばず、「社会的保護の床」(※)が崩れていく危険があります。

※12年のILO(国際労働機関)総会で提起されたもの。Social protection  floor。適度の食糧、住宅、水、衛生、教育、健康のために十分な収入を得、文化的な生活に参加し、自由に自己表現ができ、考えや知識を共有できることを指す。私たちが捉える社会保障の概念より広い内容を含んでいる。