第942回:全世代直撃の社会保障改悪(その1)

地方政治新聞「民主香川」に、「全世代直撃の社会保障改悪」というタイトルで、社会保障関連の内容の連載をしています。2017年11月5日号(第1761号)に掲載した、「安倍政権下の社会保障改悪を見る」です。一部修正していますが、情勢の変化で変更された部分もあります。

第48回衆議院選挙は、「小選挙区制のマジック」で、与党の圧勝という結果になりました。

選挙結果を冷静に見てみると、小選挙区では殆どの選挙区に候補を立てた自民党の得票率は47.8%ですが、議席占有率は74.4%です。比例代表では得票率が33.3%で、議席占有率は37.5%でした。比例代表選挙は「ドント方式」という大政党に有利な方式ですが、小選挙区ほど得票率と議席占有率の極端な乖離はなく、比例代表選挙が比較的公平な制度であることが示されました。

大都市圏の、ある自民党議員の場合、地元では50.13%と過半数の得票を得ましたが、別の地域では、47.66%、46.55%と過半数の得票は得られませんでした。この議員の選挙区合計の得票率は47.82%でした。他の候補が、立憲民主党と希望の党で、3人の競争になったため、マスコミの評価は「圧勝」でしたが、もし、民進党が分裂せず、参院選と同じ構図になれば「野党統一候補の勝利」になったと思います。

「たられば」の話に意味はありませんが、選挙結果はリアルな視点で見ていく必要があります。

とはいっても、与党圧勝、そこに与党補完勢力である、希望の党、日本維新の会が加わる訳で、社会保障政策がさらに悪化する可能性が高くなります。しばらく、「全世代直撃の社会保障改悪」と題して、来年4月に予定されている、「診療報酬」「介護報酬」「障害者福祉サービス」のトリプル改定の内容や問題点を連載していきたいと思います。

今回の選挙の冒頭、10月10日の自民党声明で、「19年10月に予定する消費税率10%への引き上げによる財源を活用……使い道を思い切って変え『全世代型社会保障』の実現」を行うと宣言しました。

財務省は10月25日の財政制度等審議会で18年度予算編成に反映する素案を提示しています。

診療報酬と介護報酬は、18年4月に同時改定が行われます。財務省は診療報酬について、薬価部分だけでなく医療行為に支払う本体部分も引き下げ、全体で2.5%以上の大幅なマイナス改定とするよう要求しています。また、薬剤師の調剤行為に支払う調剤報酬を引き下げることも求めました。

介護では通所介護や訪問介護、特別養護老人ホームなどを中心に報酬を引き下げる考えを示しています。掃除や調理などの生活援助については、1日当たりの報酬に上限を設ける形で利用制限の導入を迫っています。

生活保護の医療では、受診回数を減らして後発薬を使わなければ、一定の自己負担を課することや、子どもがいる世帯への加算・扶助の見直しを提起しています。

主たる生計者のみの所得で判定している児童手当(年12 ~ 36万円)の所得制限を世帯合算の所得で判定する、所得制限を超す世帯への特例給付(月5千円)も廃止を検討するとしています。

もちろん。財務省の考え通りに政策が実行される訳ではありませんが、政府が考えている内容は、「すべての世代にふりかかる社会保障改悪」です。