第916回:「負担の公平化」について考える(その1)

地方政治新聞「民主香川」に、「社会保障はどうなるか」というタイトルで、社会保障改悪の内容の連載をしています。2017年7月16日号(第1749号)に掲載した、「負担の公平化」について考える、の前半部分です。

本欄911回(8月29日付)と912回(9月8日付)で、「経済・財政再生アクション・プログラム2016年」(2016年12月21日 経済財政諮問会議)の内容について、「社会保障分野では、…負担能力に応じた公平な負担、…等については、…着実に実施していく」と紹介しました。

ところで、「負担能力に応じた公平な負担」とはいったいどういうことなのでしょうか。一見、高額所得者なら応分の(多額の)負担を、低所得なら払える程度の負担を、と読み取れるところですが、そういう意味ではありません。

まず、第一に「世代間・世代内の公平論」です。

2014年度から、医療費の自己負担については「世代間の公平」を考える、つまり高齢者を優遇するのをやめよう、という理由で「原則」1割から2割となりました。

これには少し説明が必要です。70歳から74歳の方の窓口負担は、2006年の法改正により2008年4月から2割となりましたが、後期高齢者医療制度の創設時に、不満が噴出したために、特例措置として1割負担としていました。しかし、厚労省の説明によれば「この特例措置により70歳から74歳の方の負担が前後の世代に比べ低くなるという状況があり、より公平な仕組みとするため」、2014年度から見直すことになったというものです。

経過措置として、2014年4月2日以降に70歳の誕生日を迎える人から順次、2割負担としました。そのため、制度としては70歳から74歳までの方は2割負担ですが、2014年4月1日までに70歳になっていた方は1割のままで、1割の方と2割の方が混在するため、「原則」という表現をしています。

細かすぎると感じる方もいるでしょうが、以前、ある団体が配布したビラに「70歳から74歳の窓口負担が2割になる」と書いてあったため、特定の宗教団体を支持基盤に持つ政党の議員が東京都のある区議会で「区民に混乱をもたらすビラを配っている団体がある」と質問をしたことが実際にありました。確かに、新たに70歳になった方から順次制度変更が適応になるわけですから、ある日を境に70歳から74歳になった方が一度に2割になるのではないので、こういった面倒くさい説明にしています。

(次号に続く)