第873回:15年4月に行われた介護報酬引き下げの悪影響が明らかになりました(その1)

高齢化に伴い、社会保障費は年間8千億円から1兆円増加します。この「自然増」を、政府は13年度から毎年5千億円程度に圧縮してきました。

15年度には、厚労省の概算要求8300億円に対し、予算案では3600億円と、4700億円圧縮しました。その中心は介護報酬2.27%の引き下げでした。

その影響がいくつかの報告で明らかになりました。

「シルバー新報」によれば、21世紀・老人福祉の向上をめざす施設連絡会(21・老福連)は、2月21日、2015年度の介護報酬改定・制度改正の影響に関するアンケート結果を、厚生労働省老健局と社会・援護局に提出しました。

全国の特別特養老人ホームや養護老人ホームなど約8700カ所の施設長を対象にアンケートを実施。1906カ所から回答があり、一定以上所得者の利用者負担引き上げや特養の補足給付の判定要件見直しなどによる自己負担増で、「費用の支払いが困難なため退所」(101件、5.2%)したケースがあった。21・老福連は、「低所得で要介護の高齢者にとって最後の砦である特養で、経済的理由により退所を余儀なくされている人がいるのはゆゆしき問題」と訴えた、と報じました。

「東京商工リサーチ」が1月11日に公表したデータによれば、2016年(1-12月)の「老人福祉・介護事業」倒産は、2000年の調査開始以来、これまで最多だった2015年(76件)の1.4倍増、108件と急増。

成長市場と注目されてきた老人福祉・介護事業だが、2015年4月の介護報酬改定や介護職員の人手不足が慢性化する中で業界内の淘汰の動きが強まっている、としました。

介護報酬引き下げに伴う、小規模事業者の経営困難、介護の担い手不足による事業継続の破たんなどが明らかになっています。

介護保険料あって介護保険なし、になりかけない状態です。速やかな介護報酬の引き上げが望まれます。

(この項、続く)