地方政治新聞「民主香川」に、「社会保障はどうなるか」というタイトルで、社会保障改悪の内容の連載をしています。2016年10月16日号(第1722号)に掲載した「社会保障はどうなるか(10) 診療報酬改定に見るこれからの医療(6)」の後半部です。2月10日付飛来峰の続きです。
(承前)
2016年4月の改定で、A項目に「救急搬送後2日間」を追加、B項目に「診療・療養上の指示」が通じない、「危険行動」など、主に認知症や精神的に混乱している状態に対応するようになりました。
そして、新たに「C項目」を設定、開頭・開胸の手術は7日間、開腹・骨の手術は5日間、全身麻酔・脊椎麻酔の手術は2日間、救命等に係る内科的治療は2日間と、手術後等の入院にも対応させるようにしました。
そして、重症者の判定基準をA項目が2点以上かつB項目3点以上、A項目3点以上、C項目1点以上とし、入院患者の25%以上が必要と引き上げました。
この結果、外科系の診療科目を持たない内科系の病院では、急性で重症患者の入院が少ないと7:1基準を維持するのは相当困難になりました。
この基準を維持できなくなると、10:1基準に変更することになります(注2)。当然必要看護師数も少なくてすむことになりますが、それでは看護師の処遇をどうするのか、という深刻な問題もあります。病棟で仕事をしていた看護師の多数をいきなり在宅医療にというのにも無理がありますから、どこの病院も悩みは大きいということになります。特に4つも5つも病棟を持っている場合は、維持するのも大変、基準を変更するのも大変ですから、2年間に限り病棟単位で届け出ることができる経過措置があります。
在宅復帰率については、自宅や介護施設、回復期リハビリ病棟、地域包括ケア病棟、療養病棟などに退院する患者の割合がこれまで75%以上であることが算定要件でしたが、新設の在宅復帰機能強化加算の届出をした有床診療所を追加、割合も80%に引き上げられました。
急性期を担う病院は急性期の重症疾患に特化、退院は何が何でも川下(在宅や施設)へという狙いが見て取れます。