第797回:16診療報酬改定について(9)在宅栄養指導について

厚労省のめざす「地域包括ケアシステム」の目指すところは、「川上から川下へ」つまり、「入院患者をできたら自宅へ、無理なら安価な施設へ」ということになります。

今回は、「在宅患者訪問栄養食事指導料」を取り上げます。

これは、以前からある評価ですが、在宅患者に対して「管理栄養士が訪問して具体的な献立によって実技を伴う指導を行った場合」に評価するものです。しかし、対象疾病が糖尿病、肝臓病、腎臓病など、病名が限られており、具体的な献立を示して「調理を介して実技を伴う指導を30分以上行った場合」に算定が可能、という訳ですから、患者さんのお宅にお邪魔して、実際に調理をしないといけないため、かなりハードルが高い内容でした(早い話が30分で調理をしないといけない訳ですから)。

今回の改定で、「調理を介して実技を伴う指導」を行わなくても「食事の用意や摂取等に関する具体的な指導」を行えばよいことになりました。また、対象疾病も、「がん、摂食・嚥下機能低下又は低栄養の患者」で、医師が認めればよいことになりました。「低栄養」の定義は、「血中アルブミンが30.g/dl以下」または医師の判断とされました。これは、多くの在宅患者、とりわけ褥瘡のできやすい寝たきりに近い患者の場合、在宅で栄養指導ができれば、メリットは大きいと思います。

在宅医療を推進する上ではメリットを感じますが、一方でいうと、がん患者や食事がとることが困難な患者を在宅に誘導する点数であるともいえます。