第707回:「患者申出療養(仮称)」制度の問題点(その2)

患者申出療養(仮称)に関する連載の2回目で、第705回(2月20日付)の続きです。

今回提案されている制度は、「困難な病気と闘う患者」からの申し出があった場合が適応となります。

初めて「患者申出療養(仮称)」を行う場合は、①臨床研究中核病院や特定機能病院に申し出る、②申し出を受けた病院は臨床研究中核病院に共同研究の実施を提案する、③臨床研究中核病院は国に申請する、という手続きを踏みます。

上記③の申請が行われた後、「患者申出療養に関する会議」で安全性、有効性、実施計画などの審査が行われ、原則6週間で、臨床研究中核病院・特定機能病院・身近な医療機関で治療が実施されます。

過去に患者申出療養が行われていた場合(つまり2例目から)は、①身近な医療機関に申し出る、②身近な医療機関が前例を取り扱った臨床中核病院に申請するという手続きを踏みます。

上記②の申請が行われた後、臨床中核病院が判断した後、原則2週間で身近な医療機関で治療が実施されます。

国が関与するのは、「対象となった医療及び当該医療を受けられる医療機関」をホームページ上で公開することだけです。上記の「患者申出療養に関する会議」に国が関与すると考えられます。国(厚生労働省)が、安全性や効果の判定にどう責任を持つのか、という点は全く不明です。

患者申出から6週間で治療が始まる、2例目からは2週間で始まる訳ですから、安全性や有効性について疑念があっても、次々と日本中で「新薬」が使われたり、「新技術」が導入されたりということになりかねません。

もともと、「評価療養」(先進医療)制度は、将来的には保険収載をすることを前提にして導入されました。2004年に評価療養制度などが導入されたときに、当時の厚生労働大臣と規制改革大臣との間で、「必要かつ適切な医療は、基本的に保険診療により確保する」という合意がなされました。

実際、2006年度から2014年度までの間に、75の技術が保険に導入され、有用性がないと判断された40技術は対象から除外されています。

今ある制度を活用すれば、安全性や効果に疑念を持たれるような制度は必要ないのです。

(この項、つづく)