第696回:社会保障を大本から破壊する「医療・介護総合法」(その7)

 地方政治新聞「民主香川」に、〈社会保障を大本から破壊する「医療・介護総合法」〉というタイトルで、連載しています。2014年11月16日号(1653号)に掲載した「第7回」で、一部修正しています。

 第684回(10月31日付)で紹介した、「介護予防・日常生活支援総合事業ガイドライン案」について詳しく述べます。このガイドラインは、厚労省が進める「地域包括ケアシステム」の構築を実現するために制定されました。

地域包括ケアシステムとは、団塊の世代が75歳以上になる「2025年を目途に、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制」をつくるためのものです。

そして、「市町村が中心となって、介護だけではなく、医療や予防、生活支援、住まいを一体的に提供する」ものとされます。

その中でターゲットとなっているのは、介護保険の認定で要支援1・2と判定された「要支援者」です。

ガイドラインでは、このように記載されています(一部略)。

○要支援者については、掃除や買い物などの生活行為の一部が難しくなっているが、排せつ、食事摂取などの身の回りの生活行為は自立している者が多い。支援する側とされる側という画一的な関係性ではなく、地域とのつながりを維持しながら、能力に応じた柔軟な支援を受けていくことで、自立意欲の向上につなげていくことが期待される。

○要支援者の多様な生活支援ニーズについて、従来予防給付として提供されていた全国一律の介護予防訪問介護及び介護予防通所介護を、市町村の実施する総合事業に移行し、要支援者自身の能力を最大限活かしつつ、介護予防訪問介護等と住民等が参画するような多様なサービスを総合的に提供可能な仕組みに見直すこととした。

難しい言い回しになっていますが、「要支援」といっても自分の身の回りのことはできるのだから、できないことだけに対応すればよい(「能力に応じた柔軟な支援」でよい)ということです。

だから「全国一律」ではなく(介護保険を使わない)、「市町村の実施する総合事業に移行」「住民等が参画するような多様なサービス」を今後は行っていくということです。

○総合事業の実施に当たっては、ボランティア活動との有機的な連携を図る等、地域の人材を活用していくことが重要である。高齢者の多くは、要介護状態や要支援状態に至っておらず、地域で社会参加できる機会を増やしていくことが、高齢者の介護予防にもつながっていく。

要支援者への訪問介護(ホームヘルパー)や通所介護(デイサービス)は、市町村事業に移行して、専門職が必要な場合もあるが、「素人」で十分な場合も多い、という結論になっているのです。

これらの政策変更は、2015年4月1日から開始されますが、法律では2017年4月まで猶予できることになっています。今後、地方議会で明らかにさせたり、行政との懇談を積極的に行うなどの運動が必要です。

ガイドラインが示されてから、市町では急ピッチで「総合事業」対策を行っています。というか「行っているはず」です。当面の課題は、市町に到達状況を確認し、住民の前に明らかにすることです。いっせい地方選挙を前に、大事な課題だと思います。