第1129回:新型コロナ感染症流行による「医療崩壊」を防ぐために

香川県保険医協会報2020年4月号の「主張」欄に、新型コロナ感染症流行による「医療崩壊」を防ぐために、と題する文章を掲載しました。少し古い話題ですが、内容は今も通用するものなので、掲載します。

2020年4月7日に7都府県に発令された「緊急事態宣言」は、対象が全国に拡げられた後、5月15日に香川県など39県が解除されました。これからの医療体制に求められる問題点を考えてみます。

新型コロナ感染症の新規患者は減少しています。しかし、これまでのPCR検査数が余りに少ないため、現状が十分把握できていません。抗体検査をはじめ様々な検査法が開発されていますから、感染の拡がりを明確にする必要があります。

今後起きるかもしれない爆発的流行に備え、PCR検査などが、医師の判断により速やかに行えるよう体制の整備が必要です。検体採取に危険を伴う場合の検査場所の確保や必要物品の備蓄なども重要です。地域により異なりますが、発熱外来などの整備も検討課題です。

陽性患者の家族内感染を防ぐため、ホテルや施設などで一定期間隔離が可能な体制も重要です。

入院患者の振り分けも大事で、各病院の専門性、検査器械、個室数など難しい問題はありますが、今ある「調整会議」を活用し、重症度に応じた入院体制の準備が必要です。

市中にはマスク等が流通し始めていますが、臨床現場ではマスク、フェイスガード、エプロン、消毒用物品などが不足しています。多くの医療機関で、使い捨てのマスクを何日も使用する、洗って再利用するなどの例もあります。感染者対応時に必須のN95マスクも繰り返し使用するなど、やむを得ず本来の使用法とは異なる対応をしている実態もあります。

必要な物品が医療機関に届けられるように、政府・自治体に求めるものです。

多くの医療機関で3月以降、特に4月は外来患者数の激減、検診の中止・延期が多い、感染を恐れる利用者が続出しデイケアやデイサービスの利用者減など、経営的に苦境に立たされているのが現状で、保障が必要です。検査や治療に携わる医師・看護師など職員の「危険手当」など処遇の面も対応が必要です。

今後とも協会として、現状を把握し必要な提言を行う予定です。