第1083回:消費税増税と全世代型社会保障について

香川県保険医協会報2019年11月20日号(No.420)の「主張」欄に、「消費税増税と全世代型社会保障について」という文章を書いたので、転載します。

9月20日に全世代型社会保障検討会議の第1回会合が開催されました。そもそも、社会保障は、憲法25条に定められた「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を、国が「増進に努めなければならない」もので、「全世代」が対象となるのは当然のことです。

会議は当初非公開とされ、事後の説明でも閣僚以外の発言者氏名を伏せていました。マスコミからも「当事者がいない」という指摘があります。

「全世代型社会保障」という言葉は、「骨太方針2018」に出てきたもので、「消費税率の8%から10%への引上げ を実施し、少子化対策や年金、医療、介護に対する安定的な財源を確保する」としたものです。しかし、周知のとおり、消費税で社会保障がよくなったという事実はありません。

後日公開された議事録に出ている意見のうち、医療に関するものを拾うと、以下の通りです。
  ・年齢で負担額を区切るのではなく、75歳を過ぎても、74歳までの自己負担を継続する
  ・市販品類似薬をどう扱うかなどの医療保険の給付範囲を見直す
  ・年齢によって負担割合が決まるのではなく、能力に見合った負担を
  ・75歳になられる方の負担を継続する
  ・外来受診時の負担金
  ・年齢をベースとするものではなくて、応能負担の徹底が重要
  ・マイナンバーの活用が重要
  ・無駄なベッド数の削減等をやっていくべき
  ・地域医療構想の完全実施など、医療提供体制改革を進めていく

などです。

分かりやすく言うと、原則1割負担の後期高齢者医療保険の自己負担を2割とし、将来的に3割とする。風邪薬や湿布薬、花粉症の薬、漢方薬など同効薬が薬局で売っている場合は、保険外しとする。1~3割の外来受診時の負担に一定額プラスして自己負担を増やす。マイナンバーカードを活用し、医療や介護の保険料の納入状況、医療や介護の利用状況、年金の受給額などを、紐づけして総合的に把握する。地域医療構想をしっかりと実施して、入院ベッドの削減を行うなどです。

とても容認できるものではなく、反対の声を大きく上げていく必要があります。