香川県保険医協会報2018年10月号の「主張」欄に、「誰一人取り残さない社会をめざして――憲法9条と社会保障を考える」という文章を掲載しました。転載します。
7月20日、厚労省は「17年の日本人の平均寿命は女性が87.26歳、男性が81.09歳で、ともに過去最高を更新した」と発表しました。
5年に1回公表される完全生命表によれば、1947年度は、男性が50.1歳、女性が54.0歳、1955年度は、男性が63.6歳、女性が67.8歳で、戦後8年間で13 ~ 14歳延びています。国民皆保険制度ができる前で、戦争が終わり経済復興前夜であることを考えると、平和であること、環境や食の状況が改善したことが主因だったのではないでしょうか。
WHO(世界保健機関)が08年に出した「健康の社会的決定要因に関する委員会」報告書によれば、生まれる前からの栄養状況、健康な場所でこそ人々は健康になる、公正な雇用と適切な労働、ライフコースを通じた社会保護、国民皆健康保険、すべての政策・システム・事業において健康の公平性を考慮するなどがあげられています。
12年のILO(国際労働機関)総会では、社会的保護(日本でいえば社会保障)が提起され、「適度の食糧、住宅、水、衛生、教育、健康のために十分な収入を得、文化的な生活に参加し、自由に自己表現ができ、考えや知識を共有できること」が重要な権利であるとされました。
12年12月の国連総会では、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)デーが制定され、「誰もが、どこでも、お金に困ることなく、必要な質のよい保健・医療サービスを受けられる状態を国際社会共通の目標とすること」が決議され、16年5月の「G7伊勢志摩首脳宣言」にも記載されました。
「誰一人取り残さないとの原則に基づき……保健システムを強化し,より強じん,費用負担可能,持続可能,かつ,公平なものとする。全ての個人の生涯を通じて健康を守り,改善するためのサービスの提供を必要とする」ことが、日本をはじめとする先進国で確認されているのです。
これらの決議にすべて賛成した日本国政府は、国際公約をいまこそ守るべきです。
憲法9条を守り、平和な国であってこそ健康が守れると思います。そして、社会保障(社会的保護)が国際社会の共通目標であることを、国民共通の合意とする運動を広げていく必要があります。