第988回:高すぎる薬価を考える(1回5千万円の薬剤について)

一般名「ニボルマブ」という、一部のがんに効果のある薬剤があります。これまで、高すぎる薬剤の典型例として、2016年の8月19日(第320回)、10月21日(837回)、10月28日(838回)に取り上げてきました。最近はこれを大きく超える薬剤の承認が検討されようとしています。

4月23日の日経新聞は、「スイス製薬大手ノバルティスの日本法人は23日、次世代のがん治療薬として知られるCAR―T細胞医療を、厚生労働省に承認申請したと発表した」と報じました。この薬剤は「キムリア」という名前で、人の免疫細胞に遺伝操作を加え、がん細胞に対する攻撃力を高める薬剤のようです(この説明が正確かどうか、自信はありません)。

難治性の白血病やリンパ腫の一部に効果があるため、専門家や患者からは期待がもたれているようです。

問題は、この薬剤の値段で、米国では1回の投与価格が47万5千ドル(約5,200万円)だということです。これがそのまま日本でも適用されるなら、日本の保険制度は確実に破たんします。

名古屋大学の小島勢二名誉教授(小児科)によれば、名古屋大学から中国の北京小児病院に送った患者さんの薬剤費は100万円、中国人は30万円ですむ(全国保険医新聞2018年2月5日号)そうで、中国が持つ特許が使用されているため、安く上がるようです。

特許の問題はともかく、米国の薬価を元に日本の薬価が決められるようでは、日本の医療保険制度が崩壊する危険が大きいと言えます。