第889回:「経済・財政再生計画」にみる患者利用者負担増(その2)

地方政治新聞「民主香川」に、「社会保障はどうなるか」というタイトルで、社会保障改悪の内容の連載をしています。2017年3月19日号(第1737号)に掲載した、「経済・財政再生計画」にみる患者利用者負担増(1)、の後半を再掲します。第887回(5月23日付)の続きです。

(承前)

そもそも、なぜこういった政策が行われるのかについて、歴史的に振り返り考えていきたいと思います。

2015年6月30日に、経済財政諮問会議が答申した「経済財政運営と改革の基本方針2015 ~経済再生なくして財政健全化なし~」(骨太方針2015)を、閣議決定しました。

骨太方針2015は、2020年度のプライマリーバランス(注1)を黒字化することを目標にしています。その中で、当初3年間(2016~18年度)を「集中改革期間」と位置づけ、集中的に取り組む。専門調査会を設置、速やかに改革工程等を具体化し、改革の進捗管理、点検、評価を行う、としました。

その具体的な中味として定められた「経済・財政再生計画」(注2)は、社会保障分野について44の「改革項目」を掲げて、そのうち医療・介護分野は38項目にのぼります。それを実施する具体的な計画が、15年12月24日の経済財政諮問会議で決定された「経済・財政アクション・プログラム」と「経済・財政再生計画 改革工程表」です。

この「改革工程表」を予算に反映させるために、財務省から、15年11月24日に財務省・財政制度等審議会が「平成28年度予算の編成等に関する建議」が出されています。

これを元にして、2016年は、以下の項目が議論されました。

  • 「かかりつけ医」を普及することを名目にした、受診時定額負担の導入
  • 市販薬類似薬の保険外し(スイッチOTC化している医療用医薬品の患者負担率の引き上げ)(注3)
  • 入院時の居住費負担の拡大(*)
  • 70歳以上の患者負担額上限の引き上げ(*)
  • 75歳以上の患者負担を原則2割にする

このうち、2017年予算編成では、(*)印の2点が反映され具体化されました。他の項目は2018年以降の実現をめざし、引き続き議論が行われるもので、決して中止になったのではありません。

注1:PB(プライマリーバランス):基礎的財政収支といい、国の歳入から国債収入を除いたものと、国の歳出から国債の利払いと国債償還費を除いたものの差額をいう。借金と利子等を除いた通常の活動での収支にあたる。

注2:最新のものは、2017年12月21日に策定された「経済・財政再生アクション・プログラム2016」で、内閣府のHPに掲載されています。

注3:OTCとは、Over The Counterの略でカウンター越しに客に薬剤の販売を行う、ドラッグストア等で取り扱われる医薬品のことで、法律的には「一般用医薬品」と呼ばれます。スイッチOTCとは、医療機関で処方される薬品と同一成分で、ドラッグストアでも販売されるものをさします。