第866回:医療費からみた社会保障(その2)

地方政治新聞「民主香川」に、「社会保障はどうなるか」というタイトルで、社会保障改悪の内容の連載をしています。2016年11月20日号(第1725号)に掲載した「社会保障はどうなるか(11) 医療費からみる社会保障(1)」です。

「飛来峰」2月21日付の続きです。

一方、伸びが目立つのは、最近高価薬の発売が目立つ糖尿病薬の11.2%、腫瘍薬(主に抗がん剤)の19.7%です。とりわけ、化学療法剤は160%の増(2.6倍)で、内訳は合成抗菌剤(いわゆる抗生物質)は3.8%の減に対し、抗ウイルス剤は249.1%増(3.5倍)でした。

この数値にどこまで影響しているかは不明ですが、抗がん剤では、一般名ニボルマブが問題になっています。この薬剤は、「根治切除不能な悪性黒色腫(3週に1回)」に投与するもので、対象患者は470人として申請があり、2014年9月に100mg/10mlで約73万円の薬価が設定されました。2015年12月に「切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌(2週に1回)」に適応が追加され、対象患者は数万に増えましたが、薬価は2年に1回の改定という原則があるため据え置きとなり、問題になりました。対象患者が100倍になった訳で、そのすべてに使用される訳ではありませんが、当然薬価の見直しがあってしかるべきだと思いますが、そうはなっていません。

この薬剤は、海外でも販売されており、諸外国と比較しても異常に高いという問題もあります。保団連(全国保険医団体連合会)が9月6日に記者会見で明らかにしたところでは、英国が約15万円(日本の6分の1)、米国が約30万円(日本の2.5分の1)です。さらに、米国では20%の値引きもあるといわれており、実質的には日本の3分の1の価格ということになります。

その後、「根治切除不能又は転移性の腎細胞癌」にも適応が広がり、さらに使用量が増えています。厚労省は中医協(中央社会保険医療協議会)で25%引き下げという提案を行っていますが、50%以上の引き下げが必要なのではないでしょうか(※)。異常な高薬価を放置すれば、保険財政を圧迫し国民皆保険制度の根幹を揺るがせかねない問題になります。

※その後、50%に引き下げになりました。