前回の続きで「社会保障はどうなるか(9) 診療報酬改定に見るこれからの医療(5)」の後半です。
(承前)
今回から「小児かかりつけ診療料」が新設されました。条件は少し複雑で、①当該医療機関を、予防接種や検診を含め4回以上受診している未就学児、②3歳以上の患者は3歳未満から小児かかりつけ診療料を算定している、③いったん、小児かかりつけ診療料を算定しなくなったら再度の算定はできない、というものです。何らかの事情で転医した場合を除き、1か所しか算定できない、つまり「主治医」制になるということです。
それでは、医療機関として何が求められるのでしょうか。①急性疾患などの対応の指導やアトピー性皮膚炎などのよくみられる慢性疾患に対する指導や診療、②患者が受診しているすべての医療機関の把握と専門医への紹介、③検診の受診状況や結果を把握し発達相談や健康相談に応じる、④予防接種歴の把握とスケジュール管理の助言、⑤電話相談を常時対応する、です。
①は当然の対応として、②から④は親とスタッフの協力があれば可能ですが、問題は⑤の「常時」対応という文言です。常時というのは24時間365日ということですから、この対応が大変で、現実的に可能かという声があります。
さらに、「同意書」が必要で、以下のような内容です。「小児かかりつけ診療料」について説明を受け、理解した上で、▲▲医院 医師 ○○○○を主治医として、病気の際の診療、継続的な医学管理、予防接種や健康に関する相談・指導等を受けることに同意いたします」。読みようによっては、他の病院にはかかりませんという宣言のようにも受け取れますから、脅しのように感じる方もいるかもしれません。
24時間対応については、連携医療機関とともに対応するということなのですが、都市部ではともかく、地方で小児科医の少ないところでは医師に対する負担が大きすぎるのではないかという声があります。どこまで広がるかは注視する必要があります。
因みに、2016年6月1日現在で、地域包括診療料の届出を行っている医療機関は186、小児かかりつけ診療料の届出は848です(いずれも全国の数値)。認知症地域包括診療料は、届出不要なので数はわかりませんが、地域包括診療料の届出が必須ですから、0から186の間ということになります。