第819回:診療報酬改定の全体像 在宅医療について(2)

地方政治新聞「民主香川」に、「社会保障はどうなるか」というタイトルで、社会保障改悪の内容の連載をしています。2016年7月17日号に掲載した「社会保障はどうなるか(7) 診療報酬改定に見るこれからの医療(3)」です。

診療報酬や医療制度について、この連載では「改悪」「後退」など批判的に紹介することが多いのですが、もちろん少なからず改善点もあります(多くはないという意味ですが)。

例えば、これまでは、平日の昼休み時間帯の往診も、日曜日や休・祝日の昼間(午前8時~午後6時。以下、休日等)の往診も、再診料に休日加算が付く以外は同じ扱いでした。

4月からは、休日等の往診が夜間と同じ扱いになります。休日の呼び出しに応じても平日と同じ扱いというのには大きな違和感がありましたが、正当な評価になりました。ただ、土曜の午後(診療終了後から18時まで)は、平日と同じです。

前号(第813回 7月12日)で、2014年の改定時に、一つの施設で複数の患者を同一日に診察したときの報酬が3割以下に引き下げられたが、今回は少し改善したと書きました。この問題はマスコミでも大きく取り上げられたため、診察料(在宅患者訪問診療料)については、介護保険サービスが提供される「特定施設」とそれ以外のマンションや有料老人ホームの差がなくなり、その点では改善しました。

施設入居時等医学総合管理料が、「単一建物診療患者」が1人、2~9人、10人以上で点数に差が付きました(※1)。診察料が、同じ建物で複数の患者を診る場合と、車で移動しながら複数の患者を診る場合で差があるのは納得できますが、患者の病状を個別に考える「管理料」に差があるのは納得できないところです。

今回から、在宅緩和ケア充実診療所・病院加算が新たに設定されました。従来の強化型在宅療養支援診療所(※2)や在宅療養支援病院であって、過去の1年間の緊急往診が15件以上、在宅看取り件数が20件以上、末期の悪性腫瘍患者への鎮痛療法の実施などについての細かな要件があり、高いハードルですが、要件を満たせば、往診への加算や在宅での看取りの加算点数が高くなります。

強化型ではない在宅療養支援診療所または在宅療養支援病院に対する「在宅療養実績加算」=時間外の往診や在宅看取りを評価するもの=が変更されました。従来の在宅療養実績加算が在宅療養実績加算1とし、少しハードルを下げた在宅療養実績加算2を新設しました。

在宅療養実績加算2は、時間外等の緊急往診が4件(加算1は10件)、在宅看取りが2件(加算1は4件)で、少し緩和されました。在宅医療の現実に見合った変更だと思いますが、まる2日間の研修が必要ですので、現実的にはハードルは高いと思います。

※1:「同一建物」「単一建物」と似たような用語が並び、それぞれ意味が違いますから、とても分かりにくい制度です。また、医師が1カ月に診た患者数で、それぞれの患者の医療費が変わるというのは、患者・家族にとってもわかりにくい制度だと思います。

※2:一つの診療所で算定可能な「単独型」と、2つ以上10未満の病院(200床未満)や診療所で構成する「連携型」があります。単独型の場合は常勤医3名以上が勤務しており、夜間往診などの緊急往診が直近1年で10件以上、在宅看取り件数が4件以上などの要件があります

注:HP製作会社の都合で、しばらくお休みです。次回は19日からアップします。