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地方政治新聞「民主香川」に、「社会保障はどうなるか」というタイトルで、社会保障改悪の内容の連載をしています。2016年4月17日号(第1704号)に掲載した「社会保障はどうなるか(4) TPPと医療について(3)」で、第787回(3月22日付)の続きです。

TPPが医療にどう影響するか考えてみます。

日本では医療費(診療報酬)は、中医協(中央社会保険医療協議会)で審議されます。協議会の構成は、支払側(保険者、被保険者、事業主の代表)、診療側(医師、歯科医師、薬剤師の代表)、公益側の三者構成で、議論は公開されていますし、関係者が議論を行う仕組みは民主的なやり方だとといえます。

しかし、TPPに参加すると、この仕組みが危うくなる可能性があります。

内閣官房HPに掲載されている、「TPP協定の全章概要」の、「第26章 透明性及び腐敗行為の防止章」の「医薬品及び医療機器のための透明性及び手続の公正に関する附属書」の中で、

「自国の保健当局が新たな医薬品又は医療機器に対する保険償還を目的とする収載のための手続を運用し、又は維持する場合、かかる収載のための全ての正式かつ適切な申請の検討を一定の期間内に完了することを確保すること、手続規則、方法、原則及び指針を開示すること等を規定」するとしています。

これまでも、米国通商代表部(USTR)は、新薬の薬価が維持される「新薬創出加算」の継続・拡大、当初想定した売り上げの2倍以上になった等の理由で薬価を引き下げる「市場拡大再算定制度」の廃止などを要求しています。

米国企業が「TPP協定の透明性」を理由に、保険収載の可否や公定価格について、「利害関係者として」介入する可能性は否定できません。

例えば、昨年5月に発売されたC型肝炎の新薬は画期的な効果ともに、1錠8万円余りという高薬価が話題になりました。12週間の服用で薬剤費だけで約673万円かかりました。この4月の薬価改定で、年間販売額が1500億円超かつ予想販売額の1.3倍以上となる製品は最大50%引き下げる「特例拡大再算定」制度により、31.7%引き下げられ、1錠約5万5千円になり、12週間の薬剤費は約460万になりました。TPPに参加するとこの仕組みが問題にされるかもしれません。

TPP文書には、「医療」の章はありません。しかし、「知的財産」「透明性及び腐敗行為の防止」「投資」などの項目が、薬価、ひいては医療保険制度そのものに影響することは間違いありません。

政府対策本部の「概要」の第9章「投資」では、「投資家と国との間の紛争の解決(ISDS)のための手続も規定している」と書かれてあります。

ISDSとは、「投資家と投資受入国との間で投資紛争が起きた場合,投資家が当該投資紛争を国際仲裁を通じて解決するもの」(外務省HPより)とされています。

医療分野においては、米国の保険会社が、(米国の)民間医療保険を日本国内で販売しようとするために、日本の医療保険制度が問題だとして、このISDS条項を使用する可能性もあります。

また、混合診療禁止の例外として認められている「先進医療」について、保険会社は対応した保険商品を発売していますが、厚労省が保険収載をすると保険商品が売れなくなるわけで、「保険収載したこと」が訴えられる可能性もあります。

TPPに関する連載を続けていれば、国会で内容が明らかになるのではないかという淡い期待を持っていましたが、案の定「墨塗り文書」のオンパレードです。国民に交渉内容を隠し続ける安倍政権は許せません。