第791回:16診療報酬改定について(6)長期投薬について

訪問診療や往診を行い患家に行き最初にやることは、大病院で処方された大量の「残薬」の処理です。調剤薬局にも手伝ってもらって、新たに処方すべき薬、残った薬で今後も使用するものに仕分けをしていきます。

最近では、大病院では10週分(70日分)、12週分(84日分)といった長期投薬が行われます。明らかに服薬がちゃんとできていないにも関わらず、患者・家族もそのことを医師に告げず、医師や調剤薬局もきちんと確認することなく、フリーパスで大量の薬剤が処方されます。今回改定の議論の中で、この残薬問題が取り上げられました。

厚労省の数字が正確かどうかは別にして、我々がやっているような「残薬対策」は資料には出てきませんから、「**億円の医療費の無駄」といった報道は一部のデータからの類推にすぎませんが、大量に残薬が発生していることは間違いありません。

今回の改定で、投薬日数が原則30日とされました。

もともと、2001年度までは内服薬・外用薬の投与期間は原則14日とし、高血圧に対する降圧剤など、特定の疾患・医薬品に限り30日分の長期投与が認められていました(一部例外がありましたが)。

慢性疾患の増加等に伴い、2002年度の診療報酬改定の際に、発売1年以内(当初は2年以内)の新薬や、麻薬や向精神薬などの一部の薬剤を除き、投与日数の制限が撤廃されました。30日の制限から無期限(薬剤の使用期限がありますが)に拡大したのも無茶な話ですが、大量の残薬が発生する事態の一因となったといえます。

今回、30日を超す投薬の場合、「医師の確認」が必要になりました。30日が限度だと、月の1日に30日分処方すると、「大の月」には月に2回来ないといけないという矛盾がありますが、医師の安全確認義務が課せられたといえます。

(この項続く)