今回の診療報酬改定の狙いの一つは「質の高い在宅医療・訪問看護の確保」です。「質の高い」が何を意味するのかは不明ですが、従来なら入院医療の適応であった患者を在宅で見ることを重視していること(患者追い出しとは言いませんが)は、間違いありません。
診療報酬制度は複雑なので、これから説明する内容は、「在宅療養支援診療所」(※)の届け出を行っており、「院外処方せんを発行している」場合の例示です。
訪問診療とは、計画的に患者さんの家(施設)を訪問し、診療を行うことですが、月に2回以上訪問診療を行うと1回あたり830点、さらに月に1回4,200点の在宅時医学総合管理料(在医総管)が算定できます。1点10円ですから、月に2回訪問診療を行うと、合計で6万円弱になります。検査や点滴を行うと別に算定できますから、一見収益が高いように思えますが、医師、診療所の看護師や訪問看護師など複数の専門家が24時間365日拘束される制度ですから、それほど多額とは言えません。そのため、厚労省が狙ったほど増えていないのでが現状です。
在宅重視の方針から考えたら診療報酬が増えるのかと思ったらそうではありませんでした。今回の改定で、在医総管の4,200点が、患者の状態により、4,600点に増える方と、3,800点に引き下げになる方に分かれることになりました。
引き上げになるのは、末期の悪性腫瘍、難病法に指定する指定難病などの他、人工呼吸器の使用、気管切開の管理、気管カニューレの使用、ドレーンチューブまたはカテーテルの使用など、従来は入院医療の対象だった患者を在宅にできるだけ移行させるための受け皿づくりといえます。
そのため、介護度が高く「手のかかる」患者だが入院の適応ではない患者(もとから入院していなかった患者)の評価より、現在入院していて早く在宅に移したい患者の評価の方が高くなっているといえます。
(この項、続く)
※在宅療養支援診療所は、医師または看護師に24時間連絡が可能で、往診や訪問看護の提供が可能な診療所です。詳細は、下記のHPを参照ください。