第776回:病床機能報告制度と地域医療構想(上)

地方政治新聞「民主香川」に、「史上最悪の社会保障改悪」というタイトルで、社会保障改悪の内容を連載しています。2015年11月15日号(第1689号)に掲載した、「第10回 病床機能報告制度と地域医療構想(上)」で、一部修正しています。

「医療・介護総合法」で、「病床機能報告制度」ができ、2014年10月1日に施行されました。これは、「医療機関が担っている医療機能の現状と今後の方向を選択し、病棟単位で、都道府県に報告する制度」です。

とりあえず今のところは、医療機関が自主的に病床機能について選択できる仕組みになっています。

ところで、医療機能とは以下の4つです

①高度急性期機能(急性期の患者に対し、状態の早期安定化に向けて、診療密度が特に高い医療を提供する機能)
②急性期機能(急性期の患者に対し、状態の早期安定化に向けて、医療を提供する機能)
③回復期機能(急性期を経過した患者への在宅復帰に向けた医療やリハビリテーションを提供する機能)
④慢性期機能(長期にわたり療養が必要な患者を入院させる機能)

高度急性期機能と急性期機能の違いが今一つはっきりしませんが、高度急性期病院とは、その地域で最高の医療機器が揃っており、殆どの分野の専門家が揃っている病院といったイメージでしょうか。

香川県の場合、15年3月末までの報告によれば、175施設(78病院、97有床診療所)の合計病床は12,587床です。内訳は、高度急性期が1,198床(9.5%)、急性期が6,367床(50.8%)、回復期が1,086床(8.7%)、慢性期は3,611床(28.7%)です(回答なしがあるので、合計は100%にはなりません)。

これらの病床を今後どうコントロールしていくかを決めていくのが「地域医療構想」で、「医療・介護総合法」では「都道府県は、国が示す地域医療構想策定のためのガイドラインに基づき、また、地域の医療需要の将来推計や報告された情報等を活用して地域医療構想を策定する」ことになっています。

3月18日に開催された「第9回地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会」で提案されたガイドラインに基づき、全国で病院ベッドのあり方について、議論が開始されました。

香川県でも、9月9日に第1回香川県地域医療構想策定検討会が開催されています。県が公表した資料によれば、25年には、急性期病床は2,992床過剰、慢性期は1,374床過剰とされました。この推計について、「病床を強制的に削減していくという趣旨」ではない、としています。

しかし、医療法によれば、県知事が講ずることができる措置として、既存医療機関による医療機能の転換への対応について、過剰な医療機能に転換しようとする場合、転換にやむを得ない事情がないと認める時は、医療審議会の意見を聴いて、転換の中止を要請(公的医療機関等には命令)することができるとしています。

また、医療計画の達成の推進のために必要な場合、県知事は公的医療機関等以外の医療機関に対して、医療審議会の意見を聴いて、稼働していない病床の削減を要請することができます。医療機関が要請に従わない場合は、県知事が勧告を行い、従わない場合や、公的医療機関が上記の命令・指示に従わない場合には、現行の医療法上の措置(管理者の変更命令や公的医療機関への運営の指示等)に加え、医療機関名の公表、各種補助金の交付対象や福祉医療機構の融資対象からの除外、地域医療支援病院・特定機能病院の不承認・承認の取消し、などの強制措置ができるようになっています。

結局、県の決めた方針通りに病床が削減されることは間違いありません。