第759回:看護師の特定行為を考える(中)

地方政治新聞「民主香川」に、「史上最悪の社会保障改悪」というタイトルで、社会保障改悪の内容を連載しています。2015年9月20日号(第1683号)に掲載した、「第8回 看護師の特定行為について考える(中)」で、一部修正しています。

「医療・介護総合法」(地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律)の成立により、特定行為を行う看護師の研修制度(当初「特定看護師制度」と呼ばれたものです)が導入されました。

この制度は、従来は医師または歯科医師にしか認められなかった、医療行為のうち、「医師又は歯科医師が患者を特定した上で、看護師に手順書により特定行為を実施するよう指示」したものについては、一定の研修の後にそれを認める制度の事です。

まず「経口用気管チューブ又は経鼻用気管チューブの位置の調整」です。呼吸が停止したり微弱になった場合、口や鼻からチューブを入れて治療を行うことがあります。人工呼吸器を使用する訳ですが、身体の状態によって、酸素濃度や人工呼吸器の作動回数、一度に送りこむ空気の量などさまざまな設定を行う必要があります。

そこで、医師の指示の下に、手順書により、身体所見(呼吸音や胸郭の上がり等)及び検査結果(経皮的動脈血酸素飽和度やレントゲン所見等)等が医師から指示された病状の範囲にあることを確認し、適切な部位に位置するようにチューブの調整を行う、というものです。

一定安定した患者の場合、看護師からの報告を聞いて直接診察することなく人工呼吸器の設定の変更の口頭指示を行うことはあります。特に外来診療中や検査に行っている場合などは、やむを得ないこともあります。

しかし、今回の制度では医師に確認することなく処置等を行った後で、医師に報告することになります。

まず、レントゲン所見が理解できなければいけませんが、一定時間の研修で可能でしょうか?また、チューブの位置の調整もうまく行けばよいのですが、浅くなりすぎ抜けやすくなることもあります。抜けてしまった場合に再度チューブを挿入しなければいけませんが、その研修を行う訳ではありません。

在宅患者の場合で、医師がすぐに患者宅に駆け付けることができない時や、入院中で医師がすぐに訪室出来ない時などに、緊急に訪問看護師や病棟の看護師が処置を行うことは当然だと思いますが、その都度医師の指示がなくても処置ができるというのは、かなり問題になると思います。

「人工呼吸管理がなされている者に対する鎮静薬の投与量の調整」、というのもあります。身体所見(睡眠や覚醒のリズム、呼吸状態、人工呼吸器との同調等)及び検査結果(動脈血液ガス分析等)等が医師から指示された病状の範囲にあることを確認し、鎮静薬の投与量の調整を行う、というものです。これも、あらかじめ医師の指示があれば、その都度看護師の判断で可能にするものです。

緊急時で医師の指示がすぐに仰げない場合など、やむを得ない場合に限ること。そして、速やかに医師の指示を仰ぐ、というのが妥当なところではないでしょうか。