第752回:看護師の特定行為を考える(上)

地方政治新聞「民主香川」に、「史上最悪の社会保障改悪」というタイトルで、医療・福祉の改悪の内容を連載しています。2015年8月9日号(第1680号)に掲載した、「第7回 看護師の特定行為について考える(上)」で、タイトルを含め一部修正しています。

2014年6月18日に「医療・介護総合法」(正式名称:地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律)」が成立し、病床の報告制度・地域包括ケアシステム、特定看護師制度、医療事故調査の仕組みなどが決められました。

しかし、この法律は、税と社会保障一体改革を元にした、「プログラム法」に基づき、医療法や介護保険法など19本の改正案をまとめた一括法であるため、具体的な内容については政令等で定められるとされていました。

その内容が徐々に明らかになってきました。

今回は「看護師の特定行為」に触れます。看護師の業務については、保助看法(保健師助産師看護師法)により、「傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする」とされています。

今回の特定看護師制度は、在宅医療等の推進を図るために、医師・歯科医師の判断を待たずに、あらかじめ定められた手順書により、一定の診療の補助(例えば脱水時の点滴(脱水の程度の判断と輸液による補正)などを行う看護師を養成するためのものです。

すでに、315時間にわたる「共通科目」の研修内容と、21区分(38行為)の内容と研修時間(1区分あたり15~72時間)は公表されており、研修する施設も決まりつつあります。

6月中旬から厚生支局(以前の社会保険事務局)単位で説明会も開催され、資料も厚労省のHPに掲載されています。

この制度にどう対応していくか、検討の余地があります。

これまで、一つ一つ、医師・歯科医師の指示のもとに看護師が行っていた医療行為が、包括的な指示(手順書)があれば、研修を終えた看護師が医師・歯科医師にその都度医師・歯科医師の指示を仰がなくても行えるようになる訳です。

例えば、インスリン注射を行っている糖尿病患者に対し、血糖の値によりインスリン量を変えるには、医師の指示が必要ですが、手順書があれば看護師の判断で可能になります。しかし、実は多くの場合、あらかじめ決めたスライディング・スケールにより看護師が判断しているのが実態だと思います。血糖値が300以上400未満ならインスリン量を2単位増やす、100~300なら指示した量で、といった具合です。

人工呼吸器の設定の変更なども、患者の容体に影響しない範囲ならある程度は実施していると思います。

しかし、人工呼吸器からの離脱、気管カニューレの交換、一時ペースメーカーの操作及び管理、胃ろうカテーテルや胃ろうボタンの交換など、医師でもできない場合が多いと思われる内容が含まれており、本当にこれでよいのか、と思います。