(第704回 2月17日 )
政府は、医療保険制度改革骨子(案)を1月9日に社会保障審議会医療保険部会に提案、了承後1月13日に社会保障制度改革推進本部で決定し、26日から始まった通常国会に関連法案を提出しました。
しばらくは、この「医療保険制度改革骨子(案)」(以下、(案)と表記)に基づいて連載したいと思います。
まず、「国民健康保険の安定化」です。もともと、国民健康保険は加入者の年齢が高いため、協会けんぽ(旧:政府管掌健康保険)や組合健保に比べ、収入が少なく、病気になる人が多いという特徴を持っています。そのため財政基盤が弱く、国庫支出金で支えなければいけません。
しかし、国保会計に占める国庫支出金の割合は、1985年には45%でしたが、2005年には31%、2007年には25%と激減しました。そもそも「国保の危機」は国庫負担を減らしたことが主な原因です。そのため、保険料を上げる、収納率が下がる、赤字となるので、一般会計から補てんする、再び保険料をあげる、という悪循環に陥っています。本来は、払える保険料に設定することが重要なことなのです。
今回の(案)では、一般会計からの繰り入れ総額の3500億円を解消するために、2017年度までに3400億円の公費の投入を行う方針ですが、厚労省の審議会では「国費の付け替えに過ぎない」と批判されています。
(案)では、「国保への財政支援の拡充等により、財政基盤を強化する。具体的には、2015年度から保険者支援制度の拡充(約1700億円)を実施する。これに加えて、更なる公費の投入を2015年度(約200億円)から行い、2017年度には、高齢者医療における後期高齢者支援金の全面総報酬割の実施に伴い生じる国費を優先的に活用し、約1700億円を投入する」としています。
2018年度からは、「都道府県が財政運営の責任主体となり、安定的な財政運営や効率的な事業運営の確保等の国保運営について中心的な役割を担う」と、国保を都道府県単位に再編することになりました。規模が大きくなればうまく行くとは限りません。日本最大の国保は横浜市ですが、2010年度決算で204億円の赤字を計上しています(都道府県単位でみると、37府県は横浜市より小さい)。
さらに問題なのが、都道府県が「市町村ごとの分賦金決定及び標準保険料率等の設定、保険給付に要する費用の支払い‥…等の促進を実施する」「財政運営に当たっては、都道府県が医療費の見込みを立て、市町村ごとの分賦金の額を決定することとし、市町村ごとの分賦金の額は、市町村ごとの医療費水準及び所得水準を反映する」としていることです。
保険料の設定に当たり、従来は市町村議会で住民の意見を反映することが可能ですが、住民の意見を聞くことなく市町村が保険料を設定することになり、高めの保険料になる可能性が高くなります。また、医療費実績が保険料に連動するため、結果として医療費抑制につながる可能性が高いということです。
地方自治体に医療費削減の役割を担わせる仕組みには、大いに問題があると言わざるを得ません。
注:(案)の引用時に、元号表記を西暦表記に変更しました。
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