(第690回 12月2日 )
10月29日に開催された、第83回社会保障審議会医療保険部会の「医療保険制度改革について」の内容の紹介です(前回までは第82回の内容でした)。飛来峰第689回(11月25日付)の続きで、「国民健康保険について」です。
まず、市町村国保の抱える問題点として、以下の点が指摘されています。
① 年齢構成が高く、医療費水準が高い
・ 65~74歳の割合:国保(32.5%)、健保組合(2.6%)
・ 一人あたり医療費:国保(31.6万円)、健保組合(14.4万円)
② 所得水準が低い
・ 加入者一人当たり平均所得:国保(83万円)、健保組合(200万円(推計))
・ 無所得世帯割合:23.7%
③ 保険料負担が重い
・加入者一人当たり保険料/加入者一人当たり所得
市町村国保(9.9%)、健保組合(5.3%) ※健保は本人負担分のみの推計値
④ 保険料(税)の収納率低下
⑤ 一般会計繰入・繰上充用(※)
・市町村による法定外繰入額:約3,900億円、うち決算補てん等の目的 :約3,500億円、繰上充用額:約1,200億円(平成24年度)
⑥ 財政運営が不安定になるリスクの 高い小規模保険者の存在
⑦ 市町村間の格差
・一人当たりの医療費は最大3.1倍(東京都)、所得は8.0倍(北海道)、保険料の差は2.9倍(東京都)
実は、⑧として、国からの補助金である国庫支出金を意識的に減らしていることが抜けています。重要性からいえば、一番目なのですが。
1984年に49.8%であった国庫支出金割合は、2003年に35.0%、2009年には約25% に低下しました。国保財政を問題にするなら、ここからスタートしなければいけないのです。
さて、社会保障制度改革プログラム法における対応の方向性として、次の内容が紹介されています。
①国保に対する財政支援の拡充
②国保の運営について、財政支援の拡充等により、国保の財政上の構造的な問題を解決することとした上で、
・ 財政運営を始めとして都道府県が担うことを基本としつつ、
・ 保険料の賦課徴収、保健事業の実施等に関する市町村の役割が積極的に果たされるよう、都道府県と市町村との適切な役割分担について検討
③ 低所得者に対する保険料軽減
ここまでを読むとさして問題はないように読めますが、実際はそうではありません。
(この項、続く)
※繰上充用
地方自治法では、歳出はその年度の歳入をもってこれに充てなければならないと定められています。歳出が歳入より多いとき(赤字ですね)には、翌年度の歳入でその不足分を補てんすることができます。これが「繰上充用」です。
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