(第686回 11月7日 )
10月15日に開催された、第82回社会保障審議会医療保険部会の「医療保険制度改革について」の内容の紹介です。飛来峰第685回(11月4日付)の続きです。
今回は、「入院時食事療養費・生活療養費」についての議論ですが、内容を紹介する前に用語解説をしておきます。
「入院時食事療養費」と「入院時生活療養費」の違いです。入院時食事療養費とは、一般病棟に入院した場合の食事代の自己負担のことで、1食260円(1日3食で780円)で、低所得者対策もあり最も少ない場合は1食100円です。入院時生活療養費は、療養病棟に入院した場合のもので、食事代に加え光熱水費(居住費)が加えられたもので、食費が1食460円(1日3食で1,380円)、居住費が1日320円ですから、3食食べれば合計1,700円になります(栄養士の配置の有無で病院によりこの額は少し異なります。所得によって、最も負担額が低い場合は、1食100円+居住費なしです)。
この負担額が今回問題になっています。
社会保障審議会医療保険部会でこれまで出た意見として、以下の内容が紹介されています。
・入院中の食事は治療の一環で、はこれ以上自己負担は増やすべきではない。治療食を必要とする患者と低所得者への配慮が必要。
・長期入院の患者は、自己負担を引き上げる。食材費に加え、調理費も自己負担をすべき。
・65歳以上の療養病床の入院患者が他の患者よりも自己負担が高くなることは、説明ができない。
見直しの論点として、以下の内容が挙げられています。
・現行の入院時食事療養費は、家計調査から算出した食材費相当額を自己負担している。在宅療養では、食材費のほか、調理に係る費用等も負担している。
・入院医療と在宅療養との公平、及び若年層と高齢者層との公平を図る観点から、入院時食事療養費・生活療養費を見直す。
現在の議論では、一般所得者の食費(1日当たり)780円を1,380円へ倍近く引き上げる案を軸に検討されていると伝えられます。
しかし、病院に支払われる報酬(食事療養費Ⅰ)は1日当たり1,920円ですから、患者負担が1,380円に引き上げられると約72%の負担率になります。この患者負担は高額療養費の対象とはなりませんから、まるまる自己負担ということになります。また、この額(1日1,380円)は、夫婦2人の食事代が1ヵ月に8万円以上という計算になります。これではとても入院できない、入院してもお金の問題で早く退院しなければ、ということになります。
こんな政策は許すことができないと思います。
(この項、続く)
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