(第685回 11月4日 )
10月15日に、第82回社会保障審議会医療保険部会が開催されました。議題は「医療保険制度改革について」で、その資料として提案された、「療養の範囲の適正化・負担の公平の確保について」から内容を紹介します。
まず、「紹介状なしで大病院を受診する場合の患者負担の在り方について」です。「平成23年患者調査」によれば、病床規模が大きくなるほど紹介率は高く、病床数が200床以上の病院についてみても、外来患者総数に占める紹介なしの患者の割合が6割~8割と高い水準にあります。
現在、200床以上の病院には、紹介状を持たずに受診した場合、特別の料金を徴収する仕組み(選定療養=患者が自分の判断で「選んで」受診したという意味)があり、初診料では1,191施設の調査で、最高8,400円 最低105円 平均2,130円で、再診料では 110施設の調査で、最高5,250円 最低210円 平均 1,006円です(2013年7月1日現在)。紹介状を持たずに受診した場合の自己負担を求めている病院は、初診料については45%、再診料では4%です。
さらに、紹介状を持たずに受診する患者が少ないと、大病院では医療費の定価である診療報酬が低くなる制度になっています。つまり、紹介状を持たずに、選定療養制度を採用していない大病院に受診すると、患者負担が少なくてすむということになります。
今回、この点が問題となり、「フリーアクセスの基本は守りつつ、限りある医療資源を効率的に活用する観点から、大病院の外来は紹介患者を中心と」する制度にしようということが議論になっている訳です。自己負担を増やしてかかりにくい制度にしておいて、「フリーアクセスの基本は守りつつ」というのは矛盾していますが、厚労省の研究事業である「病院外来受診時の一定定額自己負担制度導入に関する調査研究」によれば、200床以上の病院を受診する場合の定額負担について5000円以上の負担額を設定すれば、軽症の場合は受診せず、重症の場合は受診すると考えられるとしています。
3割負担自身が国際的にみれば大変高い水準ですが、さらに余分な負担を求めるものです。消費善増税以来、全国的にすすんでいる受診抑制に拍車をかけるものになります。
さらに、この間の地域の病院閉鎖などで、「大病院」しか存在しない地域もあります。大変問題の大きい制度変更だと思います。
(この項、続く)
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