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香川医療生活協同組合

社会保障を大本から破壊する「医療・介護総合法」(その5)

(第679回 10月7日 )

 地方政治新聞「民主香川」に、〈社会保障を大本から破壊する「医療・介護総合法」〉というタイトルで、連載しています。2014年9月21日号(1647号)に掲載した「第5回」で、一部修正しています。

 2014年4月の診療報酬改定内容のうち、在宅医療分野について述べます。

 在宅医療の中心は、往診と訪問診療です。「往診」は患者・家族から依頼があって行くもので、「訪問診療」は患者をいったん診察した上で計画を立て、定期的に患家(前回述べた「自宅等」のことです)を訪れ診療を行う場合をいいます。

 2014年3月までは、訪問診療を行う際には「同意した」旨のカルテ記載があれば問題にはなりませんでした(文書が必要という地方もあったようですが)。

 それが、「同意書を作成した上で診療録に添付する」ことが義務付けられました。手が震えたり麻痺のため字が書けないとか認知症で家族がいない場合もあります。「原則として」というのならまだしも、全員に義務付けるというのはかなり無理があります。実際、一人暮らしの方に、無理矢理に近い形でサインしていただくこともあります。

 2番目の変更点は、同一日に同一の建物で複数の患者を診察した時の訪問診療料(注1)が、大幅に引き下げられたことです。これまでも戸建て住宅の患者を診察した時は1回8,300円、看護師の配置が義務付けられている施設(特定施設)で、同一日に複数の方の診療を行う場合は4,000円、マンションや看護師配置のない高齢者住宅等で、同一日に複数の方の診療を行う場合は2,000円でした。

 これは、戸建て住宅を何軒か移動しながら診療するのと、ケアハウスなどの一室を使って次々と患者を呼び入れて複数患者を診察するとのでは、手間が違い、一日当たりの診察患者数も異なりますから、こういった差があるのには一定の合理性がありました。

 しかし、2013年10月23日の第252回中央社会保険医療協議会で、高齢者住宅の建設業者が入居者を医師に紹介し、診療報酬の一部を見返りとして受け取っていた事例が問題になり、今回極端な変更が行われました。

 戸建て住宅の場合は消費税増税を反映して訪問診療料が8,330円に増えたのに対し、特定施設で同一日に複数の方の診療を行う場合は2,030円、マンションなど看護師配置がない場合は1,030円に減額されたのです。

 さらに、月に2回訪問診療を行った時に算定できる、かかりつけ医機能を評価するための在宅時医学総合管理料は42,000円で据え置きになりましたが、同一建物居住者の場合は10,000円に減額されました(注2)。

 3番目の変更は、同一の建物に住む複数の患者を同一日に診察した時に「訪問診療に係る記録書」(「別紙様式14」)の作成を行い、診療日ごとにレセプトに添付することが義務付けられました。

 患者の氏名・住所、要介護度、認知症の日常生活自立度、訪問診療が必要な理由を記載。当日訪問診療や往診したすべての同一建物の患者の氏名・診療開始時刻・終了時刻・診療した場所の住所または名称(同一建物なのですが)などを一人ずつ記載することになりました。

 「悪名高き別紙様式14」とも呼ばれ、個人情報保護法の観点からも問題が多い、手間がかかりすぎるなど全国から批判・抗議の声が殺到しました。、保団連(全国保険医団体連合会)等の厚労省交渉や、小池参院議員(共産)などの国会議員の質問・交渉により、9月6日付事務連絡で、少しは改善しました。

 患者ごとには「要介護度」、「認知症の日常生活自立度」、「訪問診療が必要な理由」(要介護4以上又は認知症の日常生活自立度IV以上の場合は不要)を記載、算定日ごとに、「訪問診療を行った日」「診療人数合計」(同一日に同一建物の患者に、同じ医師が在宅患者訪問診療料2の対象となる訪問診療を行った人数の合計)の記載でよいことになりました。

 根本的な問題が解決した訳ではないのですが、どんなことでも、抗議の声を上げ改善要求していくことが大事だという一例です。


 注1:この項以降、在宅療養支援診療所で院外処方箋を発行している場合の数値です。
 注2:有料老人ホームやサ高住(サービス付き高齢者住宅)などで、「外部サービス利用型特定施設」と明示されている場合は、特定施設入居時医学総合管理料となり、同一建物居住者以外の場合(つまりその施設で一人だけ診察した場合)は30,000円、同一建物居住者の場合は7,200円に減額になります。


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