(第644回 4月25日 )
4月からの診療報酬改定について、在宅医療に関連した問題点に触れます。第642回(4月11日)の続きです。
依頼があり臨時に患者宅などに往くのが往診、計画を立てて往くのが訪問診療です。訪問診療を行う時には、第637回(3月18日)で述べたように、同意書の作成を行い、本人または家族から署名をもらい、カルテへの添付が義務付けられました。
それだけではありません。訪問診療を行った時、診療を開始した時刻と終了した時刻、診察した場所をカルテに記載することが義務化されました。さらに、ケアハウスやサービス付き高齢者住宅など同一の建物に住む複数の患者を同一日に診察した時には「訪問診療に係る記録書」の作成を行い、診療日ごとにレセプトに添付することが義務付けられました。
この「記録書」は、患者の氏名・住所のほか、要介護度、認知症の日常生活自立度、訪問診療が必要な理由を記載します。同じ建物に住み当日訪問診療や往診したすべての患者について、氏名・診療開始時刻・終了時刻・診療した場所の住所または名称(同一建物なのですが)などを一人ずつ記載することになっています(注)。1枚に20人くらい書けますから、20人を超えると1日で2枚、週2回訪問診療していたら1ヵ月で10枚くらいになります。多数の訪問診療をしていたら、合計数百枚の用紙を作成することになります。
月に2回以上訪問診療を行うと、かかりつけ医機能を評価するための在宅時医学総合管理料が月に1回算定できるようになります。善通寺診療所の場合は、42,000円ですが、同一建物建物居住者の場合は10,000円に減額されます。
看護師配置のある同一建物に住む方の訪問診療を行ったとき、1人だけなら8,330円が請求できますが、複数を診療した場合は2,030円と大幅な減額になります(第642回に詳述)。
さらに細かいルールがあります。
往診患者は同一建物居住者のカウントから外れます。
末期がんの診断を受け、訪問診療を始めて60日以内の場合は、同一建物居住者のカウントから外れます(60日を過ぎるとカウントの対象になる)。
訪問診療したのち30日以内に死亡した場合は、遡って同一建物居住者のカウントから外れます。
そこで、こんなふうになります(以下、同一日の診療のケース)。
AさんとBさんを訪問診療すると2人とも2,030円になります。
Aさんが訪問診療でBさんが往診の場合は、Aさんは8,330円、Bさんは往診の点数になります。
AさんもBさんも訪問診療だが、Bさんが末期がんの診断を受けて訪問診療を始めて60日以内の場合は人数のカウントから外されるため、AさんもBさんも8,330円です。
AさんもBさんを同一日に診察すると2人とも2,030円になりますが、Bさんが訪問診療日から30日以内に死亡すると遡って同一建物居住者のカウントから外れます。そのため、いったん、2,030円で請求したレセプトを取り下げて、2人とも8,330円を再請求することになります。
Aさんにしてみれば、自分の病状は全く変わらないのに、Bさんの病状次第で請求額が変わるというのは納得できないと思います。また、Bさんが死んだからAさんの先月分の請求額が増えたと追加料金を請求されたら、一体どうなっているのかと思うでしょう。現実的には請求できないのではないでしょうか。
「左手に時計、右手に電卓を持ち訪問診療を」というのが、今回のキャッチコピーなのでしょうか?
今回の内容は読んでいてもよくわからん、という苦情が予想されます。厚労省が、ただでさえややこしい診療報酬のルールをさらに難しくしていると思います。診療報酬の速やかな改訂を強く要求します。
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